カバレッジと品質向上の関係性について
ソフトウェア開発において、品質を向上させるためにはテストが欠かせません。テストはソフトウェアの品質を保証し、バグの早期発見に役立ちます。その中でも、テストの網羅率を測定するカバレッジは、テストの品質を評価する上で重要な指標のひとつです。
本記事では、カバレッジの基本的な概念から品質向上における役割、カバレッジを向上させるための手法、課題について解説いたします。
カバレッジとは何か
ソフトウェアテストにおけるカバレッジとは、テスト対象のコードや仕様について、どれだけテストしたかを示す指標です。カバレッジは、プロダクトのコードにおいて、どれだけテストされているかを示すので、テストの品質を評価する上で重要な情報となります。
カバレッジは、主に単体テストにおいて重視されます。モデルやコントローラーなどの単位でテストを行い、テスト全体でプロジェクトのコードをどれだけ精査しているかをカバレッジ率として示します。開発者はレポートを見て、テストされていないコードを特定し、さらにテスト条件を追加します。
網羅率の重要性
カバレッジの網羅率が100%であれば、それはプロジェクト全体のプログラミングコードがテストされていることを意味します。逆にカバレッジ率が低いのであれば、テストされていないコードが多い状態であり、バグが潜んでいる可能性が高いことを示すでしょう。
もちろん、カバレッジ率が100%だからといってバグがないという訳ではありません。仕様に合わせたテストが行われていなければ、やはり不具合が混入する可能性はあります。しかし、カバレッジ率が低い状態の場合は、そもそも品質を保証できる状態にもなっていないので、やはりカバレッジ率の高さは品質向上を考える上で大事な指標になります。
さらにカバレッジ率の高い状態であれば、テスト条件(送信するデータの型など)を変更するのは、さほど難しくありません。そうしたテストコードの積み重ねによって、プロダクトの品質を向上させられます。
カバレッジを向上させるための手法
カバレッジを向上させるためには、以下の点を改善すると良いでしょう。
– 仕様の明確化
– チーム内の意識改善
– カバレッジの可視化・共有
– テスト自動化
– リリース後の不具合分析
では、カバレッジ向上のための改善点を詳しく解説していきます。
仕様の明確化
テストコードは仕様に合わせて実装されるべきです。仕様に含まれていない、ごく当たり前なテストだけ行っていても品質は向上しません。その結果、テストと品質向上が結びつかず、開発者のモチベーションは上がりません。
仕様を明確にし、仕様に準拠する形でテストコードが書かれることで、カバレッジ率向上とプロダクト品質がリンクします。このような対応をすれば、最小のテストコードで最大の効果を得られるでしょう。
チーム内の意識改善
プロダクトの品質はテストエンジニア・テスト部署が作り込むものではありません。品質は、プロジェクトメンバー全体で作り上げるものだという意識が必要です。チーム内の意識がそうなっていない場合は、その意識改善が必要です。
プロダクトの品質が高まると、手戻りが減り、緊急性の高い不具合対応によるリソース消費が軽減します。結果として開発に集中できる時間が増え、開発者の負担が減るでしょう。
カバレッジの可視化・共有
プロジェクト内のどういった取り組みであれ、可視化と共有はモチベーション向上につながります。カバレッジ率をグラフにして表示し、チーム内で共有することで、メンバー全員がカバレッジ向上に向けて取り組みやすくなります。
逆に、個々の人で取り組んでいる状態では品質向上には結びつきづらいものです。チーム全体で状況を共有し、共通の目標を持つのが改善の近道です。
テスト自動化
カバレッジ率を高めようとすると、自然とテストコードが増えていきます。そうして作られていくテストスクリプトは、バージョン管理システムと連携し、CIで自動実行されます。それがテスト自動化です。
テスト自動化によって、テストが非同期で実行され、開発者は目の前の開発に専念できます。また、網羅率によってコードを受け付けるかどうかのルール決めもでき、自然とテストコードを書く習慣が身につきます。
リリース後の不具合分析
カバレッジ率を高めるのは、結果としてプロダクト品質を高めるという目的があるからです。そのため、実際にプロダクト品質が高まっていることを確認できなければなりません。
プロダクト品質を測る指標はさまざまですが、たとえばリリース後の不具合発生数やその解消にかかった工数を測定するという方法があります。不具合対応が減れば、開発チームとしても品質向上が実感できるでしょう。
役立つツールについて
カバレッジ率を測定するツールはプログラミング言語やフレームワークごとに各種存在します。Go言語など、そのプログラミング言語自体がテストやカバレッジ測定をサポートしている場合もあります。
– Java:
– [JaCoCo](https://www.eclemma.org/jacoco/)
– [Cobertura](https://cobertura.github.io/cobertura/)
– Python:
– [Coverage.py](https://coverage.readthedocs.io/en/)
– C#
– [NCover](https://www.ncover.com/)
– [dotCover](https://www.jetbrains.com/ja-jp/dotcover/)
– JavaScript:
– [Istanbul](https://istanbul.js.org/)
– Ruby:
– [SimpleCov](https://github.com/simplecov-ruby/simplecov)
– PHP:
– [PHPUnit](https://phpunit.de/)
カバレッジの限界と課題
これまでご紹介してきた通り、カバレッジ率が100%になったとしても、それは不具合がゼロということを意味しません。カバレッジ率は、テストされたコードの割合を示す指標であり、テストの質や仕様に合致しているかどうかは別の問題です。テストコードの品質も重要です。
また、カバレッジ率を高めるためには、テストコードを書く工数がかかります。そのため、カバレッジ率を高めようとするあまり、開発効率が下がってしまう可能性があります。特に、カバレッジ率が十分に高い状態からさらに向上させる場合は、その工数が数段上がってしまうでしょう。
適切なカバレッジ率は、プロジェクトの求める品質レベルや、そこにかけられる工数によって変わってきます。プロジェクトの目標に合わせて、適切なカバレッジ率の設定と、必要な取り組みと改善の繰り返しが求められます。
まとめ
「カバレッジと品質向上の関係性 課題や手法をご紹介」と題して、ご紹介してまいりました。本記事ではカバレッジの基本と、カバレッジとプロダクト品質の関係性について解説しました。現状、カバレッジを考慮していないのであれば、導入効果は大きいのでお勧めします。すでにカバレッジ率が十分高いのに品質に課題がある場合には、その内容(テスト品質)を見直すと良いでしょう。
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