開発スピードと品質は両立できる?アジャイル開発におけるテスト標準化と自動化の進め方
開発スピードと品質の両立が求められるなかで、「テストが特定の担当者に依存していて進まない」「品質を優先すると開発が遅れる」といった課題に直面する現場は多く見られます。
こうした状況を改善するには、品質確認のタイミングを前倒ししながら、テストの標準化と自動化を同時に進めることが重要です。
本記事では、アジャイル開発における品質確認の進め方や属人化を防ぐための標準化の手法、さらにテスト自動化を現場に定着させるためのポイントについて解説します。
開発スピードと品質が両立しづらい原因
開発スピードと品質が両立しづらいのは、開発の進行が速いからではありません。品質確認のタイミング、手戻りの発生、判断のばらつきが重なると、確認作業が遅れやすくなり、全体の進行に影響してしまうためです。ここでは、開発スピードと品質が両立しづらい原因を整理します。
原因①品質確認が開発の後半に集中しやすい
品質確認が開発の後半に集中しやすいのは、テストが最後にまとめて行う作業として扱われやすいからです。上流工程で確認すべき内容が十分に整理されないまま進むと、問題の発見も後ろにずれ込みやすくなるでしょう。品質確認が後半になりやすい主な要因は、以下の通りです。
- 要件定義や設計の段階で、確認観点が十分に整理されていない
- 開発完了を優先し、テストを後工程の作業として切り分けている
- 受け入れ条件があいまいで、何を満たせば完了か早期に決められていない
- テスト担当が開発の後半で関わるため、前段階で確認しにくい
- 進行遅れが出ると、しわ寄せがテスト工程に集まりやすい
このように、品質確認が後半に集中する背景には、確認不足ではなく進め方の構造が関係しています。品質確認を前倒しするには、要件・設計の段階から確認項目と完了条件を整理し、開発と並行して確かめる体制へ変えることが重要です。
原因②不具合の手戻りが開発全体を遅らせる
不具合の手戻りが増えると、開発は想像以上に遅くなります。直す作業だけでなく、原因調査や影響確認、再テストまで必要になるため、予定していた次の作業に時間を割けなくなるからです。手戻りが多くなりやすい理由は、次の通りです。
- 不具合の原因を調べる作業が発生する
- 修正によって他の機能に影響が出ていないか確認が必要になる
- 修正後に再テストが必要になり、確認範囲が広がる
- 関係者との調整や再説明に時間がかかりやすい
手戻りは、単なる修正作業ではなく、開発全体の流れを止める要因です。後でまとめて直せばよいと考えるほど、結果として納期も品質も守りにくくなります。
早い段階で問題を見つけて、小さく直す進め方が重要です。
原因③判断基準が人によってぶれる
判断基準が担当者ごとに違うと、開発スピードと品質は両立しにくくなります。同じ機能を確認しても合否の判断がそろわないと、修正の有無や確認範囲を決め直す必要があり、手戻りや待ち時間が増えやすくなるためです。
その結果、リリース判断も遅れやすくなるでしょう。
判断基準のぶれは品質のばらつきだけでなく、確認工程の停滞にもつながるため、開発スピードに直接影響する要因といえます。判断がぶれやすい場面には、次のようなものがあります。
- ある担当者は合格とし、別の担当者は要修正と判断してしまう
- 確認する範囲が担当者ごとに異なる
- 期待する結果の書き方があいまいで受け取り方が分かれる
- 開始条件や終了条件がそろっておらず、確認の前提がずれる
このような状態では、誰が担当するかで品質が変わってしまいます。開発スピードと品質を安定させるには、経験の差に頼るのではなく、誰が見ても同じ判断になりやすい基準を整えることが大切です。
スピードと品質を両立させるアジャイル開発のポイント
開発スピードと品質が両立しづらい場合、解決方法の一つとしてアジャイル開発が挙げられます。アジャイル開発とは、機能単位の「小さなサイクル(計画・設計・開発・テスト)」を短期間で何度も繰り返す手法です。ここでは、アジャイル開発のポイントについて解説します。
ポイント①要件の段階で受け入れ条件を明確にする
要件定義の段階で受け入れ条件を明確にしておくと、後からどこまでできれば完了なのか迷いにくくなります。受け入れ条件とは、その機能を合格と判断するための具体的な基準です。
例えば、要件定義で「保存できる」とだけ決めるのではなく、「必要項目を入れて保存ボタンを押すと登録が完了する」のように具体的に決めておけば、開発側と確認側の認識がずれにくくなります。完成の基準を先にそろえることが、手戻りを減らす第一歩です。
ポイント②小さく開発して小さく確認する
機能をまとめて作って最後に確認するよりも、小さく作ってその都度確かめる方が、問題を早く見つけやすくなります。
例えば、すべての要件をまとめて作るのではなく、スプリントで対応できる単位に分けて開発し、都度レビューや確認を行えば、問題が起きた個所を速い段階で把握しやすくなるでしょう。
小さく開発して小さく確認する進め方は、品質に注意しながら開発スピードも保ちやすくなります。
ポイント③シフトレフトで早い段階から品質を見る
シフトレフトとは、品質確認を後半にまとめず、スプリント全体を通じて継続的に行う考え方です。要件の整理、実装、レビュー、テストの各工程で品質を意識することで、問題を早い段階で見つけやすくなるため、大きな手戻りを防ぎやすくなります。
例えば、スプリントの終盤でまとめて不具合を確認するのではなく、着手時の認識合わせ、開発中のレビュー、実装後の確認を繰り返せば、問題がどの段階で生じたのか把握しやすくなるでしょう。
後半にまとめて確かめるのではなく、スプリント全体で品質を見続けることが、開発スピードを守るうえで重要です。
テスト標準化の手順
アジャイル開発は、品質確認を早い段階から進めやすい方法です。ただし、確認の仕方が担当者ごとに異なるままでは、品質も開発スピードも安定しません。
テスト観点・手順・判定基準をそろえ、誰が担当しても同じ水準で確認できるように標準化することが、開発スピードと品質を両立させる土台となります。ここでは、テストを標準化する手順について解説します。
①テスト観点を共通化する
テスト観点を共通化すると、担当者ごとの確認漏れを防ぎやすくなります。ここでいう観点とは、「どの視点で確認項目をそろえるか」という考え方です。
先に共通の考え方を決めておくことで、誰が担当しても確認範囲を合わせやすくなります。共通化する観点は、次のように整理できます。
| 共通化する観点 | 内容 |
|---|---|
| 正常系の観点 | 想定どおりに動くかどうかという確認項目を共通化する |
| 異常系の観点 | 誤入力や想定外の操作で、適切に処理されるかという確認項目を共通化する |
| 条件分岐の観点 | 入力内容や利用条件の違いで、動作が変わる箇所の確認項目を共通化する |
| 周辺影響の観点 | 修正した機能が、他の画面や関連機能に影響していないかという確認項目を共通化する |
このように、見るべき視点を先にそろえることで、経験者だけが気づける確認ポイントをチーム全体で共有しやすくなります。結果として、担当者が変わっても確認の質がぶれにくくなり、テストの標準化を進めやすくなるでしょう。
②テスト手順をテンプレート化する
テスト手順をテンプレート化すると、担当者が変わっても同じ流れで確認しやすくなります。毎回ゼロから手順を作るのではなく、共通の型を用意しておくことで、準備の負担を抑えながら実行のばらつきも減らせるでしょう。手順をテンプレート化する際に取り決めしておくべき項目は、次の通りです。
| テンプレート化する項目 | 内容 |
|---|---|
| 事前条件 | どの画面、権限、データが必要かを同じ書き方で記載する |
| 操作手順 | 誰が見ても同じ順番で実行できるように操作内容の記載方法をそろえる |
| 確認結果 | 何を見て成功・失敗を判断するかを同じ形式で書く |
| 後続確認 | 関連機能や後続画面の確認有無を同じ基準で記載する |
このように、手順の書き方そのものをそろえることで、担当者による書き方や確認の流れの差を減らせます。引き継ぎもしやすくなり、特定の人しか回せない状態を防ぎながら、品質を安定させることにつながります。
③判定基準を明文化する
判定基準を明文化すると、同じ結果でも担当者によって合否が変わるという状況を防げます。「問題ないと思う」といった感覚ではなく、何を満たせば合格かを言葉でそろえることが重要です。明文化すべき項目は、下表の通りです。
| 明文化する項目 | 内容 |
|---|---|
| 期待する画面表示 | 文言、ボタン、画面遷移が仕様通りか明記する |
| 入力後の動作 | 保存、更新、削除などの結果を具体的に書く |
| エラー時の表示 | どの条件で、どの文言が表示されるかを定める |
| テスト完了の条件 | どこまで確認できれば終了とするかを決める |
このように合否の基準を先に文章で固定しておくと、担当者が変わっても判断がそろいやすくなります。確認のたびに認識合わせをする必要が減るため、属人化を防ぎながら、安定した品質管理を進めやすくなります。
テスト自動化で効率化する際のポイント
テスト自動化は、単なる効率化や工数削減が目的ではありません。アジャイル開発のスプリント内で品質確認を行い、限られた期間で必要な品質を保つための重要な取り組みです。
標準化した確認作業を自動化できれば、確認漏れや属人化を防ぎながら、開発スピードと品質の両立を実現しやすくなります。
ここでは、テストを自動化する際のポイントについて解説します。
ポイント①繰り返し実施するテストから着手する
テスト自動化は、スプリント内で品質確認を実施しやすくするためにも、毎回同じように繰り返すテストから着手することが重要です。自動化に着手する場合は、以下の順序となります。
- 毎回のリリース前に必ず実施している確認を洗い出す
- 人手で行う回数が多い作業を選ぶ
- 手順が比較的決まっているテストを優先する
- 自動化した後の効果を測りやすい範囲から始める
最初から広い範囲を自動化しようとすると、準備や保守の負担が大きくなりやすいです。まずは、何度も繰り返している確認作業を対象にすると、開発スピードを落とさずに進めやすくなります。小さく始めて成果を見せることが、定着への近道です。
ポイント②属人化しやすい確認作業を優先する
テスト自動化では、特定の担当者に依存している確認作業から見直すと、現場が安定しやすくなります。その人がいないと止まる作業を減らせれば、品質だけでなく進行面の不安も抑えやすくなるでしょう。優先する作業の整理は、次のような順序で実施します。
- 毎回同じ担当者が行っている確認を洗い出す
- 経験がないと判断しにくい作業を見つける
- 担当者によって結果がぶれやすい確認を選ぶ
- 引き継ぎに時間がかかる作業から自動化を検討する
自動化の目的は、単に作業を減らすことではありません。誰が担当しても同じように確認できる状態を作ることが重要です。属人化しやすい作業から整えていけば、担当者の不在に左右されにくくなり、引き継ぎしやすい運用にもつながります。
ポイント③運用しやすいツールを選ぶ
テスト自動化ツールは、導入のしやすさだけでなく、使い続けられるものを選ぶことが大切です。導入した直後は便利でも、更新や修正がしにくいと、現場の負担が増えて使われなくなる可能性があります。ツールを選ぶ際は、次のような順序で整理するとよいでしょう。
- 追加や修正を無理なく行えるかを確認する
- 実行結果が見やすく管理しやすいかを見る
- 担当者が増えても運用しやすいかを確かめる
- 現場の体制やスキルに合うかを判断する
テスト自動化は、導入することよりも続けることの方が難しいです。そのため、機能の多さだけで選ぶのではなく、「修正のしやすさ」「管理のしやすさ」「引き継ぎのしやすさ」などを確認して判断することが重要です。
運用しやすいツールを検討する際は、T-DASHのように、テスト自動化を現場へ定着させやすいサービスを選ぶ方法が有効です。追加や修正のしやすさ、扱いやすさを確認しながら、自社に合った形で導入を進めるのが良いでしょう。
テスト自動化については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてお読みください。
まとめ
開発スピードと品質を両立するには、テストを後工程に集中させず、アジャイル開発の考え方で品質確認を前倒しすることが重要です。また、テスト観点・手順・判断基準を標準化し、繰り返し実施する確認作業から自動化を進めることで、属人化の解消と効率化を図れます。
特定の人しかテストを回せない現場では、運用しやすいテスト自動化ツールの活用が有効です。T-DASHは、テスト自動化を進める際のハードルを抑えながら、標準化した確認作業を現場に定着させやすい形で導入できます。
開発スピードと品質の両立に課題を感じている場合は、T-DASHの活用も検討してみてください。
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