「ブラックボックステスト」は、ソフトウェアテストの品質を保証するうえで欠かせないテスト手法です。ブラックボックステストがどのようなテストなのか、「ホワイトボックステスト」とどう違うのか、など疑問を抱く方も少なくないのではないでしょうか。
本稿では、ブラックボックステストとは何か、その基本事項をまとめて解説します。ブラックボックステストのメリット・デメリットや、併用される有用なテスト技法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ブラックボックステストとは
ブラックボックステストとは、テスト対象の内部構造を考慮せずに実施するテスト手法のことです。
「ブラックボックス」には「内部の仕組みが分からない箱」という意味があります。
つまり、プログラムの内部処理を知らない状態でもテスト対象に対して検証します。
ブラックボックステストの実施にあたって着目するのは、テスト対象の「入力」と「出力」です。
ある入力(データや条件)をテスト対象に与えた際に、期待する出力(データや挙動)が得られるか、といった観点で検証します。
ホワイトボックステストとの違い
ブラックボックステストと対比される「ホワイトボックステスト」との違いを押さえておきましょう。
ホワイトボックステストとは、テスト対象の内部構造に着目して実施するテスト手法です。
処理の分岐やループ、関数の関係性など、主に開発者視点で実施します。

一方、ブラックボックステストではテスト対象の内部構造に踏み込まず、外から見たときの振る舞いに焦点を当てます。
たとえばデータ登録を行うと会員登録ができるか、誤った入力データに対して仕様どおりのエラーメッセージが出力されるか、といった検証が一例です。
このとき、エラーメッセージの内容や出力条件は、仕様書や要件定義書といったドキュメントに準拠します。
どちらの手法が優れているということはなく、両方を組み合わせてソフトウェアの品質をより確実に担保することが大切です。
▶ ホワイトボックステストとは?基礎知識から成功のポイントまで解説
ブラックボックステストを実施するメリット
ブラックボックステストを実施するメリットは、主に次の3つです。
2-1 プログラミングの専門知識がなくても実施できる
ブラックボックステストは、基本的にプログラミングの専門知識がなくても実施できます。テスト対象の入力と出力が明確に定義されたドキュメント(仕様書や要件定義書など)があれば、それをもとにテストケースを作成できます。
そのため、開発経験の少ない品質保証チームや若手エンジニアでも実施しやすいでしょう。ただし、プログラミングの知識があればテストケースの漏れに気付けたり、テスト設計の精度を向上できたりするため、知識があるに越したことはありません。
2-2 ユーザー視点で問題を検出できる
ブラックボックステストを実施することで、ユーザー視点で問題を検出できます。ユーザーが実際に操作するシナリオに沿って実施できるため、開発者視点では見落としやすい問題でも検出できます。
たとえば、予期せぬエラーの発生を前提とするシナリオの場合、エラーメッセージを見たユーザーが正しく対処できるか、といった観点で検証できます。テスト対象を「外部から」利用するユーザーにとっての振る舞いを確認できるため、運用段階でユーザーが直面し得る問題を事前に検出できます。
2-3 さまざまな種類のテストに適用できる
ブラックボックステストは、テスト対象の入力・出力を定義したドキュメントさえあれば、基本的にテストの種類を問わず実施できます。そのため、個々のプログラム要素レベルで実施する単体テストから、納品段階のソフトウェアを検証する受け入れテストまで、さまざまな種類のテストに適用できます。
一方、ホワイトボックステストは主に単体テストや結合テストを対象とするため、ブラックボックステストほど広範囲な適用は難しいです。ブラックボックステストはその柔軟性ゆえに、ソフトウェア開発のあらゆるフェーズにおいて実施可能な点が強みといえます。
ブラックボックステストを実施する注意点
ブラックボックステストには、メリットだけでなく注意点もあります。ブラックボックステストを実施する注意点は、主に次の2つです。
3-1 プログラムレベルの問題は検出が難しい
ブラックボックステストでは、テスト対象の内部構造に着目しないため、プログラム内部の誤りや構造的な欠陥は検出が難しいです。
たとえば、処理の順序が設計どおりでなかったとしても、最終的な出力が設計と一致すれば問題は発見できません。
プログラムレベルの問題を検出するためには、ホワイトボックステストも併用することが不可欠です。
3-2 テストケースの作成に手間がかかりやすい
ホワイトボックステストと比べてテスト対象が広範囲にわたるため、テストケースの作成に手間がかかりやすいのが難点です。
特に、ソフトウェア全体をテスト対象とするシステムテストでは、多くのテストケースを準備する必要があります。
ブラックボックステストのテストケース作成をおろそかにすると、テスト漏れによりバグを見逃しかねません。
ブラックボックステストにおいて役立つテスト技法
ブラックボックステストを効率的・効果的に実施するためには、テスト技法の活用が不可欠です。
ここでは、ブラックボックステストにおいて役立つテスト技法5つを紹介します。

4-1 同値分割法
「同値分割法」は、テスト対象の入力値を、出力値にもとづきグループ化する技法です。
出力が同じとなる入力値を「同値パーティション」としてまとめ、各同値パーティション から代表値を選んでテストケースを作成します。
グループ化によってテストケースの数を絞り込むことで、作成の負担を軽減できます。
たとえば「年齢」の入力欄において、18歳未満は「未成年」、18歳以上は「成人」を出力するとしましょう。
このとき、「18歳未満」と「18歳以上」をそれぞれ同値パーティションとして扱うことで、テストする入力値を2ケースに絞り込めます。
4-2 境界値分析
「境界値分析」は、仕様条件の境界値に着目してテストする入力値を決める技法です。
一般的に、バグは境界付近で発生しやすい傾向があるため、境界付近を重点的にテストすることでバグを効率的に検出できます。
境界値分析は、前出の同値分割法と併用することが一般的です。
たとえば、年齢の入力値において「18歳未満」と「18歳以上」の同値パーティションがある場合、境界値は「18歳」となります。
そのため、境界値分析を適用すると、入力値として「17歳」と「18歳」の2ケースを選定できます。
境界値分析についての詳細は以下の記事をご覧ください。
4-3 組合せテスト
「組合せテスト」は、複数の入力条件を効率的に組み合わせてテストケースを作成する技法です。
たとえば「OS」と「ブラウザ」の組み合わせをテストする場合、OSとブラウザの種類を単純に掛け合わせるとテストケースが膨大となってしまいます。
しかし、組合せテストを適用すれば、バグを見逃すリスクを抑えつつ、組み合わせ数を削減できます。
組合せテストでは、「直交表」や「オールペア法」といった手法を用いることで、テストすべき入力条件の組み合わせパターンを絞り込みます。
| 名称 | 概要 |
| 直交表 | どの入力項目を2つ選んでも、入力値の組み合わせパターンが同数含まれるように組み合わせる手法 |
| オールペア法 | 入力値の組み合わせパターンに偏りがあっても良いが、あらゆる入力項目のペアを少なくとも1回はテストするように組み合わせる手法 |
たとえば、ログイン機能において「ユーザーID」「パスワード」「認証コード」の3つの入力条件があり、それぞれ有効・無効の2パターンがある場合、通常、すべての組み合わせを試すためには2×2×2=8パターンの組み合わせが必要です。
しかし直交表を使用すると、次の4パターンで十分なテストを実施可能となります。この時の組合わせ方を2因子間網羅と呼びます。
このとき、どの2つの入力条件(因子)を選んだ場合でも、「有効/有効」「有効/無効」「無効/有効」「無効/無効」のペアが1回ずつ含まれることが分かります。
4-4 デシジョンテーブル
「デシジョンテーブル」は、複数の入力条件と、それらに対応する出力(アクション)を表形式で整理し、テストケースを決める技法です。
入力と出力の組み合わせが可視化されるため、複雑な条件分岐がある場合でも重要なテストケースを見逃しにくくなります。
たとえば、「有料会員への登録有無」と「購入金額」の組み合わせで割引率が変わる場合、次のようなデシジョンテーブルを作成できます。
| 1 | 2 | 3 | 4 | ||
| 入力条件 | 有料会員に登録済み | Y | Y | N | N |
| 購入金額が1,000円以上 | Y | N | Y | N | |
| 割引率 | 0% | – | – | – | X |
| 3% | – | – | X | – | |
| 6% | – | X | – | – | |
| 10% | X | – | – | – |
このように、該当する場合は「Y(Yes)」、該当しない場合は「N(No)」と表記することが一般的です。
デシジョンテーブルを作成することで、入力条件ごとの出力が明確となり、テストケースの漏れを防止できます。
▶ デシジョンテーブルテストとは?基本の構成・書き方のポイントを解説
4-5 状態遷移テスト
「状態遷移テスト」は、ソフトウェアの状態変化を可視化し、想定どおりの状態遷移が行われるかをテストする技法です。
「状態遷移表」や「状態遷移図」によって特定の状態を可視化することで、状態遷移の漏れを防止できます。
たとえば、レンタカーの予約システムにおける、自動車の予約状況の状態遷移を考えましょう。
このとき、次のような状態遷移表を作成できます。
このように、ある状態におけるイベント(出来事)の発生を受けて、次に遷移する状態を可視化することが一般的です。
| レンタル | 返却 | メンテナンス開始 | メンテナンス完了 | |
| 未使用 | 使用中 | – | メンテナンス中 | – |
| 使用中 | – | 未使用 | – | – |
| 使用不可 | – | – | メンテナンス中 | – |
| メンテナンス中 | – | – | – | 未使用 |
この状態遷移表に沿ってテストケースを作成すれば、自動車の予約状況の状態遷移を網羅的にテストできます。


状態遷移図についての詳細はこちらをご覧ください。
▶ 状態遷移図をわかりやすく!具体的な例と図式化するメリットをご紹介
ブラックボックステストを成功させるには
ブラックボックステストを成功させるうえでは、さまざまなテスト技法の活用がカギとなります。
ただし、テスト技法について正しく理解していないと、テストケースに漏れが生じたり、かえって時間を要したりすることも考えられます。
そのためテスト技法について学び、正しく理解を深めることが大切です。
テスト技法についてはこちらの資料で分かりやすく解説していますので、ぜひご活用ください。

また、組織として若手メンバーの育成に課題を感じている方は、オンライン教育プログラム「バルデミー」をご活用ください。
バルデミーでは、ソフトウェアのテストや品質保証に役立つ実践的な学習コンテンツをオンラインで提供しており、体系的に学習できます。
まとめ
ブラックボックステストとは、テスト対象の内部構造を考慮せずに実施するテスト手法のことです。
「ブラックボックス」には「内部の仕組みが分からない箱」という意味があります。つまり、プログラムの内部処理を知らないテスト対象に対して検証します。
効果的なブラックボックステストを行うためには、テスト技法を正しく理解し、活用することが重要です。
ブラックボックステストを実施する際には、今回の内容をぜひ参考にしてください。