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最終更新日時:2026.02.17 (公開日:2026.02.17)

狩野モデルの5つの品質カテゴリを解説!導入ステップと注意点

ソフトウェア開発において、品質とそれにかかわる要求の整理はとても大事です。品質と要求の整理では、ユーザの期待に応えるためにどの品質が最も重要かを明確にします。そのベースとなる考え方として、狩野モデルが知られています。

本記事では狩野モデルの基本と、狩野モデルを用いた品質と要求の整理方法について解説します。

狩野モデルとは

狩野モデルは、品質を5つのカテゴリに分類するフレームワークです。提唱したのは狩野紀昭氏で、ユーザ満足度と要求の関係に注目したものとなっています。

狩野モデルは、他の品質モデル(ISOなど)と異なり、ユーザ視点から品質を評価するのに特化しています。

また、ユーザ満足度を向上させるための有力なツールとして、広く利用されています。

5つの品質カテゴリの特徴

狩野モデルで採用している、5つの品質カテゴリについて解説します。

狩野モデル

2-1 当たり前品質

当たり前品質は、ユーザが当然期待する機能や性能です。

これらが満たされないと、不満が生じます。つまり、当たり前品質は「必須」の品質とも言えます。

ただし、文字どおりユーザが「当たり前」と考えるものなので、明確に要求として出てこないこともあります。いかに当たり前品質を洗い出すかが、品質向上のポイントになります。

2-2 一元的品質

一元的品質は、性能や機能向上によってユーザ満足度も比例して向上する品質です。

例えば、処理速度や応答性などが該当します。当たり前品質が満たされている上で、一元的品質が向上するとユーザの満足度が高まります。

2-3 魅力的品質

魅力的品質は、ユーザが期待していないが、満たされると驚きや感動を与える品質です。これらは、競合製品との差別化要因となることが多いです。例えば、独自のデザインや特別な機能などが該当します。

2-4 無関心品質

無関心品質は、ユーザの関心に影響しない品質です。これらは、ユーザにとって重要ではないため、改善しても満足度にはほとんど影響しません。そのため、多くのリソースを割く必要はありません。

2-5 逆品質

逆品質は、存在すると逆に不満を与える品質です。例えば、使いにくいインターフェースや、不要な機能が該当します。逆品質は、ユーザの信頼を損なう可能性があるため、存在に注意が必要です。

狩野モデルを取り入れるメリット

狩野モデルを取り入れるメリットは、製品・サービスの品質向上と顧客満足度の最大化にあります。

ここでは、主なメリットを詳しく解説します。

3-1 要件の優先順位付けがしやすくなる

狩野モデルを活用すると、限られたリソースの中で開発やサービス改善の優先順位を合理的かつ論理的に決定することが可能になります。

これは、顧客ニーズが満足にどう結びつくかを分類することで、それぞれの機能がどの程度重要で、どれほどの影響力を持つかを定量的に評価できるからです。

たとえば、Webサービスの改善において、アンケートを通じて「読み込み速度の向上」が一元的品質として評価された場合、それは満足度の直線的な向上につながるため、最優先で改善すべき事項と判断できます。

一方、「ダークモード」のようなデザイン面でのこだわりは、魅力的品質に分類される可能性があり、予算や時間に余裕がある場合に検討すべき機能となります。

このように、狩野モデルによる分類を通じて、感覚に頼らず、戦略的な判断ができる体制を築くことができます。

3-2 顧客満足度を効率的に向上させることできる

狩野モデルを導入することで、顧客満足度を最大限に高めるための具体的な指針を得ることができます。

これは、顧客のニーズを「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」などに分類し、それぞれが満足度や不満にどう影響するかを体系的に把握できるからです。

たとえば、スマートフォンアプリの開発において、動作の安定性や基本的なセキュリティ対策は当たり前品質として求められます。これらが欠けていれば不満につながりますが、あっても顧客は特に感動を示しません。

一方で、ログイン時の顔認証や直感的なUIなどは、ユーザーが必ずしも要求していないにもかかわらず、提供されることで高い満足を生む「魅力的品質」に該当します。

このように、狩野モデルを活用することで顧客満足度を戦略的に向上させることができ、競合との差別化にもつながります。

3-3 新しい価値を発見しやすい

狩野モデルを用いることで、顧客がまだ言語化していない潜在的ニーズや新しい価値を創出できる可能性が広がります。

特に注目すべきは「魅力的品質」の存在です。これは、顧客がそれを期待していたわけではないにもかかわらず、提供されると強い満足や感動を覚える要素です。

例としては、カメラアプリにAIによる自動補正機能を追加することで、「誰でもプロ並みの写真が撮れる」と評判になったなどです。

このように、「魅力的品質」を上げることで他社にはない付加価値として競争力を高める効果があります。

このように、表面的な顧客の声にとどまらず、その背後にある潜在的な期待に目を向けることで、革新的な機能やサービスの着想が得られるのです。

3-4 顧客とのコミュニケーションが論理的になる

狩野モデルを活用することで、顧客とのコミュニケーションは感覚的なやりとりから、根拠に基づいた論理的かつ柔軟な対話へと進化します。

特に、アジャイル開発のように要件が頻繁に変動する現場においては、そのニーズの優先順位や本質を明確にする仕組みとして非常に親和性が高いです。

狩野モデルでは、顧客アンケートやインタビューの結果を「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」などに分類することで、各ニーズの性質と期待値を整理できます。これにより、スプリントごとに「今回はどの品質カテゴリを重視するか」「次回は魅力的品質を取り込めるか」など、ストーリーポイントやバックログの優先づけにも一貫性が生まれます。

狩野モデルは顧客ニーズを構造的に理解するための共通言語となり、アジャイル開発のようにスピードと変化が求められる場面でも、チーム全体で認識を揃えながら開発を推進することが可能です。

結果として、顧客との対話の質が高まり、短期的にも長期的にも満足度の高い製品開発が実現できます。

狩野モデルの導入ステップ

続いて、狩野モデルを実際に導入するためのステップについて解説します。

  1. ユーザアンケートやフィードバックの収集
  2. 機能や要求を5つのカテゴリに分類
  3. 分類結果をもとに優先順位を可視化
  4. テスト計画や品質施策に反映

ステップ1.ユーザアンケートやフィードバックの収集

ユーザの期待やニーズを把握するために、アンケートやフィードバックを収集します。こうした情報は、どの品質が重要視されているかを明らかにできるでしょう。このステップは、狩野モデルを適用するための基礎となります。

アンケートやフィードバックは、オンラインフォームやインタビューなど、さまざまな方法で収集できます。重要なのは、ユーザの声を直接聞くことです。

ステップ2.機能や要求を5つのカテゴリに分類

収集した情報をもとに、機能や要求を狩野モデルの5つのカテゴリに分類します。このステップでは、要求の重要度を明確にするのが目的です。分類は、チーム内でのディスカッションやワークショップを通じて行うと効果的です。各カテゴリの特徴を理解し、どの機能や要求がどのカテゴリに該当するかを議論します。

ステークホルダーによって、重要視される品質が異なるため、幅広い意見を取り入れることが重要です。ただし、議論が拡散しないよう、最終的なゴール(機能や要求をカテゴライズする)は共通認識として持ち合わせなければなりません。

ステップ3.分類結果をもとに優先順位を可視化

分類結果をもとに、各品質の優先順位を可視化します。可視化により、どの品質にリソースを集中させるべきかを明確にします。優先順位は当たり前品質、一元的品質、魅力的品質の順に高くなることが一般的です。

可視化には、マトリックスやグラフを用いると効果的です。例えば品質をX軸、リソースをY軸にとったグラフを作成し、各機能や要求を配置します。ビジュアル化によって、どの品質が最も重要で効果的かを一目で把握できるでしょう。

ステップ4.テスト計画や品質施策に反映

優先順位が明確になったら、それをもとにテスト計画や品質施策に反映させます。当たり前品質と一元的品質に関連する項目は優先的にテストし、魅力的品質についても戦略的に取り入れることが重要です。

これにより、ユーザの期待に応える製品を提供することが可能になります。

狩野モデルを導入する際の注意点

実際に狩野モデルを導入する際には、いくつかの注意点と誤解があります。こうしたポイントに注意して、効果的に狩野モデルを活用してください。

  • 同じ項目でもユーザ層によって分類が異なる
  • 魅力的品質に偏りすぎるリスク
  • 静的な分類でなく、継続的な見直しが必要
  • 全品質が均等に重要なわけではないことを理解する

5-1 同じ項目でもユーザ層によって分類が異なる

たとえ同じ機能や要求であっても、ユーザ層によってその重要度や期待は異なります。例えば、エンタープライズ向けのソフトウェアと一般消費者向けのアプリでは、求められる品質が異なるでしょう。そのため、狩野モデルを適用する際には、ターゲットユーザ層を明確にし、それに応じて品質要求を分類します。

間違った分類を行うと、ユーザの期待に応えられないプロダクトになる可能性があります。したがって、ユーザ層ごとにアンケートやフィードバックを収集し、それに基づいて品質要求を整理することが求められます。

5-2 魅力的品質に偏りすぎる

魅力的品質は、ユーザが期待していないが、満たされると驚きや感動を与える品質です。しかし、魅力的品質に過度に焦点を当てすぎると、当たり前品質や一元的品質が疎かになるリスクがあります。これは、ユーザの期待に応えられないプロダクトになってしまうでしょう。

そのため、魅力的品質はあくまで補完的な要素として位置づけ、当たり前品質と一元的品質を優先にしなければなりません。魅力的品質は、競合との差別化要因として有効ですが、基本的な機能や性能が満たされているのが前提であると認識しましょう。

5-3 静的な分類でなく、継続的な見直しが必要

狩野モデルは一度実施して終わりではなく、継続的な見直しが必要です。市場やユーザのニーズは常に変化するため、品質要求も変わる可能性があります。そのため、定期的にユーザアンケートやフィードバックを収集し、品質要求の分類を見直しましょう。

継続的な見直しにより、最新のユーザの期待に応えるプロダクトを提供できるようになります。また、競合製品の動向や市場の変化に対して、迅速に対応できるようになります。

5-4 全品質が均等に重要なわけではないことを理解する

品質向上は重要ですが、すべての品質や要求に対応することは現実的に難しいことが多いです。

狩野モデルで洗い出された品質や要求については、洗い出したうえでそれぞれどのように対応するか、対応しないかを検討してください。

上でも触れた魅力的品質に偏らず、むしろ当たり前品質を重視するようにして、大きな信頼低下につながらないようにしていきましょう。

まとめ

今回は、狩野モデルの基本と、品質要求の整理方法について解説しました。

狩野モデルは、ユーザの期待に応えるプロダクトを開発するためには欠かせないツールです。品質要求を5つのカテゴリに分類することで、優先順位を明確にできます。

ぜひ、狩野モデルを活用した品質要求の整理と、優先順位付けを行ってみてください。

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