ソフトウェア開発の現場において、レビューは欠かせない工程の一つです。
レビューによって、バグの早期発見や品質向上、属人化の防止など、多くの効果を得ることができます。しかし、レビューと一口に言っても、その種類や手法はさまざまです。
開発チームの規模やプロジェクトのフェーズによっても、適切なレビューの方法は異なります。
そこで本記事では、ソフトウェアレビューの目的や効果、代表的な種類について解説します。
さらに記事の後半では、成果を上げるレビューのポイントや効率化させるツールついてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ソフトウェアレビューとは?
ソフトウェアレビューとは、ソフトウェアの成果物(コード、ドキュメントなど)を他者が評価・検証する活動を指します。
コードが対象となることが多いですが、それ以外にもドキュメント(要件定義書、設計書、テスト仕様書など)もレビューの対象になります。
ソフトウェアを動作せずに評価・検証を行うので、静的テストとも呼ばれます。
1-1 ソフトウェアレビューの目的
ソフトウェアレビューを実施する目的は、品質とチーム開発体制の両面において健全な開発を実現することにあります。
具体的には主に以下の5つです。
- バグの早期発見
- コード品質の向上
- 知識の共有と教育
- 属人化の防止
- チームのコミュニケーションの活性化
まず、バグの早期発見を目的とすることで、手戻りを減らし開発効率を高めます。次に、レビューを通じてコードの構造や記述の一貫性を確認することにより、コード品質の向上を図ります。
また、コードを相互に確認し合うことで、知識の共有と教育を推進し、チーム内のスキル平準化を目指します。
さらに、特定のメンバーだけが理解している状態を避けるために、属人化の防止が目的となります。
最後に、レビューの対話を通じて、チームのコミュニケーションを活性化し、協力的な開発環境を築くことも重要な目的の一つです。
1-2 動的テストとの違い
ソフトウェアレビューを行えば動的テストが不要になると誤解されることもあります。
しかし、レビューは動的テストとは異なり、品質を保証するわけではありません。成果物が要件に則って適切に実装されていることを保証するのは、動的テストの役割になります。
| 静的テスト(レビュー) | 動的テスト | |
| 目的 | 成果物の評価・検証 | 要件に対する動作確認 |
| 対象 | コードやドキュメント | 実行可能なコード・ソフトウェア |
| 実施タイミング | 開発の各フェーズで実施 | 開発後の検証フェーズで実施 |
| 実施者 | 開発者以外のメンバーも参加可能 | 主に 開発者自身や QA チーム、自動化ツールが担当 |
ソフトウェアレビューの代表的な5つの種類
ソフトウェアレビューには、タイミングや形式、目的によってさまざまな種類があります。
代表的なレビューの種類は以下の5つです。
- モブレビュー
- ウォークスルー
- インスペクション
- ピアレビュー
- アドホックレビュー
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 モブレビュー
モブレビューは、開発チーム全員が集まり、リアルタイムでコードや設計について意見交換を行う形式のレビューです。
特に要件が決まった段階での初期状態、特に設計レビューに適しています。
この時には、実装担当者が業務要件について説明したり、実際の設計について説明したりします。その内容を受けて、チーム全体で業務要件を把握し、他のモジュールへの影響度について意見交換を行います。
開発チーム全体が関わるため、どちらかといえば小規模なチームに向いているレビューと言えるでしょう。
2-2 ウォークスルー
ウォークスルーは、ドキュメント作成者が主導となり、コードや設計の内容をチームメンバーに説明しながら進める形式のレビューです。主に以下のような特徴があります。
- カジュアルで非形式的
- 教育的な側面
レビューを受けるのは主に新人や経験の浅いメンバーで、コードの理解を深めることが目的です。コードの品質向上だけでなく、チーム内の知識共有や教育にも有効です。
2-3 インスペクション
インスペクションは第三者(モデレータ)が主導して、チェックリストなどに沿って行う形式的なレビューです。以下のような特徴があります。
- 作成者以外のメンバーが主導
- あらかじめ定められたチェックリストに基づいて行う
インスペクションでは、第三者(モデレータ)が介在することで、より客観的な視点での評価を可能にします。
評価を行う際には、あらかじめ作成している評価基準やチェックリストに基づいて、コードの品質や設計の適切性を確認します。
また、レビューに関する報告書や指摘の分析、フォローアップなど様々なルールがあります。
インスペクションは、特に大規模なプロジェクトや、複数の企業やチームが関わる場合に有効です。
また、仕様書・要件定義書のインスペクションにはバルテスが提供するAIツール「QuinSpect」がおすすめです。
アップロードされた要件定義書や設計仕様書などのドキュメントを読み込み、バルテス独自のインスペクション観点(正確性・理解性・視覚性・深層性・信頼性)で分析を行い、問題点や改善点をレポートします。
▶ AI仕様書インスペクションツール「QuintSpect」
2-4 ピアレビュー
ピアレビューは、開発チームのメンバー同士が互いのコードをレビューし合うことを指します。以下のような特徴があります。
- カジュアルで非形式的
- 日常的に実施
ピアレビューは、特にアジャイル開発やスクラムなどの手法でよく用いられます。
コード変更が頻繁に発生するチームでは日常的にレビューを行い、バグの早期発見やコード品質の向上・安定性を図ります。ピアレビューでは多くの場合、後述する「アドホックレビュー」が行われます。
2-5 アドホックレビュー
アドホックレビューは、特に形式やルールに縛られず、必要に応じて即時的に行うレビューです。以下のような特徴があります。
- 形式に縛られない
- 即時的なフィードバック
アドホックレビューは、特定のルールやチェックリストに基づかず、開発者が必要と感じたタイミングで行います。
例えば、コードの変更があった際に、その場で他のメンバーに確認を求めるようなケースです。
特に、変更が他のモジュールに影響を与える可能性がある場合に有効です。レビューする側には、即時的なフィードバックが求められます。
ソフトウェアレビュー手法の使い分け
上記のようにソフトウェアレビューにはいくつかの種類がありますが、どの手法を選ぶかはプロジェクトの特性やチームの状況によって異なります。
以下に、各手法の特徴と使い分けのポイントをまとめます。
| 手法 | 特徴 | 目的 | 適用場面 |
| モブレビュー | チーム全員でリアルタイムに意見交換 | 初期状態の設計レビュー | 小規模なチーム、初期段階のプロジェクト |
| ウォークスルー | 開発者が主導、カジュアルな形式 | コードの理解を深める、教育的な側面 | 新人教育、知識共有 |
| インスペクション | 第三者が主導、形式的なレビュー | 客観的な評価、品質の向上 | 大規模プロジェクト、複数チーム間の連携 |
| ピアレビュー | チームメンバー同士のカジュアルなレビュー | 日常的なコード品質の向上、バグの早期発見 | アジャイル開発、スクラムチーム |
| アドホックレビュー | 形式に縛られない即時的なフィードバック | 必要に応じた即時的な確認 | 変更が頻繁に発生する場面、緊急の確認が必要な場合 |
ソフトウェアレビューの手法を選ぶ際には、以下のポイントを考慮します。
- プロジェクトの規模やフェーズ
- チームの規模や文化
- レビューの目的(バグの早期発見、知識共有、品質向上など)
- レビューの実施頻度やタイミング
- レビューの形式(フォーマル、インフォーマル)
レビューは一定の工数がかかることも考慮する必要があります。多くの人がレビューに時間を割くことで、結果的にコストが高くなってしまうのです。特に、開発メンバー全員が集まるようなレビューでは時間の調整も難しく、その分負荷も大きくなります。
また、レビューを担当するエンジニアはシニア層が多く、単価も高いため、時間の消費がそのままコストに直結します。
レビューが回らなくなるほど負荷が高まるケースも少なくありません。そのため、レビューを効果的に進めるためには、レビューイ側の事前準備も重要です。
また、レビューの目的については、チーム内であらかじめ合意形成しておきましょう。目的がはっきりせずに取り組んでいると、人によってレビューの意識や期待値が異なり、効果的なレビューができません。
コードレビューを例にすると、人によってコードの細かな部分を見たり、パフォーマンスを重視したりと基準が異なると、指摘事項を修正しても、次のレビューでまた別の指摘が出てくることになります。
これはレビュアー、レビューイの双方にとって負担が大きくなってしまうでしょう。レビューチェックリストなどを用いて効率的に進められるよう工夫しましょう。
なお、レビューは一つだけ行えばいいというものではありません。必要に応じて、複数のレビュー方法を組み合わせて実施してください。
要求定義・要件定義などの最初のフェーズでモブレビューを行なって要件のずれを防止し、最後にインスペクションを行うといった形で、プロジェクトの進行に応じて適切なレビューを選択して進めることをおすすめします。
成果を上げるソフトウェアレビューのポイント
プロジェクトの規模が大きくなった場合には、レビューガイドラインを設け、ドキュメントを通じて明文化することが大切です。
以下のポイントに考慮して進めていきましょう。
- レビューの目的を明確にする
…何を重視するのか(バグの早期発見、コード品質の向上、知識共有など)をチームで合意しておく - レビューのルールを定める
…レビューの頻度や形式、チェックリストなどをあらかじめ決めておく - 心理的安全性の確保
…レビューは批判ではなく、改善のための活動であることをチーム全体で理解する - レビュアーの負荷軽減
…特定のレビュアーに負荷が集中しないよう、ローテーションや分担を行う
最初から完璧なレビューを目指すのではなく、小さく始めて徐々に改善していくことが重要です。
レビューの質を向上させるためには、定期的な振り返りやフィードバックも行なっていくことをおすすめします。
ソフトウェアレビューを効率化するツール活用
ソフトウェアレビューは、ツールを効果的に活用することで、効率化と品質向上を図ることができます。以下に、ソフトウェアレビュー全般に活用できる代表的なツールや手法を紹介します。
5-1 レビュー支援ツール
レビュー支援ツールには、GitHub や GitLab のプルリクエスト機能のようなコードレビューに特化したものだけでなく、Crucible やReview Boardなど、設計資料やドキュメントにも対応したツールがあります。
これらを活用することで、コメントの履歴管理や指摘事項の可視化が可能となり、レビューの質とトレーサビリティの向上が期待できるでしょう。
5-2 AIを使った自動レビュー
近年では、AIを活用したレビュー支援も注目されています。
たとえば、CodeRabbitやGitHub CopilotのようなAIツールは、コードの初期レビューやベストプラクティスに基づく指摘を自動で行うことが可能です。
また、自然言語処理技術を活用したツールでは、設計書やテスト観点の不整合・曖昧表現の検出なども一部サポートされつつあります。AIによる一次チェックを取り入れることで、人によるレビューの負荷を軽減し、注力すべき観点に集中できます。
5-3 静的解析・チェックツールとの併用
レビュー前に、Lintツールや静的解析ツール(SonarQubeなど)を使うことで、自動的にスタイルの不統一や潜在的な問題を洗い出すことができます。
また、ドキュメントに対しても、文章の表記揺れや形式のチェックを行うツールを活用することで、レビューの精度を高められます。
こうしたツールをプログラミングエディタや IDE に組み込むことで、レビュー前のコード品質を高めることができ、レビュアーは本質的な設計や仕様の妥当性など、より高次の観点に集中できるでしょう。
まとめ
本記事では、ソフトウェアレビューの概要や手法について解説しました。
チーム開発において、レビュープロセスは欠かせません。しかし、レビュー負荷やチーム内のコミュニケーションを悪化させると言った課題を持つチームもあります。適切なレビュー手法を選び、ツールを活用することで、効果的なレビューを実現してください。
バルテスでは、テスト専門企業として、開発チームの生産性向上に関するコンサルティングや、テスト自動化の支援を行っています。ソフトウェアレビューの導入や改善についても、ぜひご相談ください。
