ソフトウェア開発は年々高速化、効率化が求められるようになっています。アジャイル開発やDevOpsの普及により、リリースサイクルの短縮化や継続的デリバリーが実現されています。
そうした中にあっても、プロダクトの品質は維持されなければなりません。
本記事では、ソフトウェアテストの効率化を実現するための設計・実行・プロセス面の工夫や、最適化に必要な分析指標、さらにはアウトソーシングの活用まで、包括的に紹介します。
ソフトウェアテストを効率化させる方法
テストの効率化を目指すには、単なる「作業短縮」ではなく、設計・実行・プロセスそれぞれの観点からアプローチする必要があります。この章では、各フェーズで取り組むべき具体的な方法をご紹介します。
1-1 【設計】リスクベースのテスト設計をする
全ての機能を網羅的にテストするには膨大な工数がかかります。そこで有効なのが「リスクベースドテスト」です。
これは、機能の重要性や障害発生時の影響度を軸に優先順位をつけ、リスクの高い部分に重点を置いてテストを行う方法です。リスクはビジネス的、利用頻度的、技術的視点から評価します。
リスクを定量化・分類することで、限られた時間でも効率よく品質保証が行えます。
リスクベースドテストについて詳しくはこちらをご覧ください。
1-2 【設計】モジュールごとにテストを実行する
システムを機能単位でモジュールに分解し、それぞれに対してテストを設計・実行することで、テストの独立性が高まり、保守性や再利用性が向上します。
特にアジャイル開発のような反復的な開発スタイルでは、影響範囲の特定やテストの差分実行がしやすくなり、効率的な品質保証が可能になります。
また、モジュールごとに責務が明確になることで、責任範囲の分担やエラー発生時の切り分けも迅速に行えます。
さらに、実際にテスト設計工数を削減するための具体的な手法として、「境界値分析」と「ペアワイズテスト」の活用が効果的です。
■ 境界値分析による効率的な網羅
境界値分析は、バグが発生しやすい「境界」部分に着目し、最小限のテストケースで最大限のバグ検出を目指す設計手法です。
たとえば、入力が1〜100の範囲に限定されている場合、境界前後の値(例:0, 1, 2, 99, 100, 101)だけをテストすることで、高い網羅性を保ちつつケース数を絞ることができます。
このアプローチは、モジュール単位で定義された入力仕様に対して非常に適用しやすく、限定された検証範囲で高い効果を発揮します。
■ ペアワイズテストで組み合わせ爆発を回避
複数の入力パラメータを持つモジュールでは、すべての組み合わせをテストするのは現実的ではありません。そこで活用できるのがペアワイズテストです。
これは、2つのパラメータの全組み合わせ(ペア)を網羅する最小限のケースセットを設計する手法です。
例えば、3つのパラメータ(A, B, C)それぞれが2値(0, 1)を取る場合、全組み合わせは8通りですが、ペアワイズであればわずか4通りで、各ペアの組み合わせを十分にカバーできます(例:A0B0C0、A0B1C1、A1B0C1、A1B1C0など)。
これにより、テスト工数を大幅に削減しつつ、主要な不具合の検出に有効な設計が可能になります。
境界値分析・組合せテストなどのテスト技法について詳しく知りたい方はこちらの資料をご活用ください。
1-3 【実行】テスト自動化を導入する
人手によるテストには限界があります。単純で繰り返し発生するテストケースには自動化を積極的に導入しましょう。
テスト自動化は、単体テストから始めて、API/統合テスト、E2E/回帰テストと段階的に導入していくことが一般的です。
また、すべて自動化するのではなく、こちらもリスク評価した上で効果の大きい部分から行っていきましょう。テスト自動化は、一度作ったら終わりではなく、メンテナンスコストも考慮する必要があります。
テスト自動化は、初期投資が大きいですが、長期的にはコスト削減につながるでしょう。それだけに導入容易性や低学習コスト、メンテナンス工数の低いツールを選定することが大事になります。
テスト自動化を実現するツールとして、バルテスではT-DASHを提供しています。
T-DASHはローコードテスト自動化ツールで、誰でもすぐに使える分かりやすいUI/UX、テストスクリプトを日本語で記述できてメンテナンスコストが小さいのが特徴です。
1-4 【プロセス】CI/CDと並列実行で作る
テスト自動化を導入後、考えるべきなのがテストパイプラインの効率化です。テストパイプラインは、開発からデリバリーまでのプロセスを指します。
テストパイプラインを効率化することで、テスト実行時間短縮とリリースサイクル短縮を実現できます。
テストパイプラインを効率化するためには、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の導入が欠かせません。CI/CDによって、開発からデリバリーまでのプロセスを自動化し、迅速なリリースを実現します。
CI/CDはコンテナを用いたテスト並列実行などもできるので、より効率的なテストが可能になります。
さらに、CI/CDと連携して効率的な検証を実現する手法として、フィーチャーフラグの導入があります。
フィーチャーフラグとは、特定の機能をコード内でON/OFFできるスイッチのような仕組みで、以下のような活用が可能です
- 開発中の機能をデプロイしつつ、ユーザーには非表示
- 本番環境に特定のユーザー/グループだけ機能を有効化
- リスクを抑えた段階的展開(カナリアリリースやA/Bテスト)
これにより、テスト環境と本番環境の差を最小限にしつつ、安全に動作検証を行うことができます。
たとえば、機能ごとに個別のフィーチャーフラグを設定し、ステージング環境や内部ユーザーに限定して有効化すれば、想定外の影響を防ぎながら本番相当の検証が可能です。
フィーチャーフラグは、CI/CDの自動デプロイと組み合わせて、「コードは常に本番環境に存在しているが、ユーザーに見せるかは制御できる」という柔軟な運用が実現できるでしょう。
1-5 【プロセス】継続的に改善する
一度作ったテストプロセスや設計も、時間の経過とともに形骸化する可能性があります。
テストは一度構築して終わりではなく、プロジェクトの進行やシステムの成長に応じて改善を繰り返す必要がある活動です。
継続的改善の取り組みを行うことで、非効率な部分や隠れた問題点を定期的に洗い出し、テストプロセス全体を進化させることができます。
具体的には以下のような方法があります。
■KPIを設定し、継続的に測定する
まず重要なのは、定量的な指標(KPI:Key Performance Indicator)を明確にすることです。
代表的なKPIには以下のようなものがあります:
- テスト実行時間
- テスト自動化率
- 不具合再発率(リグレッション率)
- テストケースの通過率
- インシデント対応時間
これらを定期的にモニタリングすることで、改善の成果や新たな課題を定量的に把握することができます。KPIはチームの成熟度に応じて段階的に見直し、適切な目標設定を行うことがポイントです。
■ フィードバックループと品質ゲートの活用
継続的改善には、フィードバックループの設計も欠かせません。これは、テスト実行後の結果を分析し、次回の設計・実行・運用に活かす「振り返りの仕組み」です。
ここで役立つのが、品質ゲートとダッシュボードです。
品質ゲートは、テストプロセスの各段階で品質を確認するための仕組みです。ダッシュボードでは、テストプロセスの進捗や品質を可視化します。
改善は「一度きりの施策」ではなく「連続する見直しと最適化のサイクル」です。継続的改善を意識的に組み込むことで、組織としてのテスト品質と生産性を長期的に高めることが可能になります。
最適な効率化を実現するために分析すべきこと
「改善」には現状の可視化が不可欠です。
どの工程にどれだけ時間がかかり、どの部分がボトルネックになっているかを定量的に捉えることで、効率化への糸口が見えてきます。
この章では、テスト業務の最適化に必要な分析指標について解説します。
2-1 インシデント対応時間
テストの品質が低いと、リリース後の障害対応に時間がかかります。
インシデント発生から解決までの時間を定期的に計測・分析することで、予防策やテストの妥当性を見直すヒントが得られるでしょう。
インシデント対応の主な種類は以下の通りです。
- MTTR(Mean Time To Repair) 障害が発生してから復旧するまでの平均時間
- MTBF(Mean Time Between Failure) 障害が発生してから次の障害が発生するまでの平均時間
- MTTD(Mean Time To Detect)障害が発生してから検知するまでの平均時間
これらの指標を計測すると、インシデントがどれくらいの頻度で発生しているか、稼働状況にどれくらいの影響を及ぼしているかが分かります。MTTRとMTTDは短ければ短いほどよく、MTTFとMTBFは長ければ長いほど良い稼働状況ということになります。
2-2 リードタイム
リードタイムは、仕様変更からリリースまでに要する全体期間を指します。テストフェーズがリードタイムの中でどの程度を占めているかを分析することで、ボトルネックを特定しやすくなります。
2-3 サイクルタイム
サイクルタイムは、特定の作業(例:テストケースの設計や実行)にかかる所要時間です。サイクルタイムが短いほど、タスクの処理が効率的であることを示します。
ただし、タスクの粒度によってサイクルタイムは変わるため、タスクの粒度を揃えるか、タスクの見積もりをした上で、サイクルタイムに反映する必要があります。
このように繰り返し行う作業の効率を可視化することで、自動化やテンプレート化の対象を明確にできるしょう。
2-4 テスト実行時間
テスト実行時間は、テストケースを実行するのにかかる時間を示します。
テストの合計実行時間を定期的に測定することで、テスト自動化や並列化の効果を数値で捉えることができます。テストケースの冗長性にも気づくことができ、削減判断の材料にもなります。
2-5 テスト自動化率
テスト自動化率とは、全体のテストケースのうち、何%が自動化されているかを測る指標です。
継続的な改善によりこの比率を徐々に高めていくことが、長期的な効率向上につながります。
ただし、自動化率が増えるとメンテナンスコストも増えていくため、メンテナンスコストも測定指標に盛り込む必要があるでしょう。
2-6 リグレッション発生率
リグレッション発生率は、リリース後に発生した不具合のうち、既存機能に影響を与えたものの割合を示します。
リグレッション発生率が低いほど、開発プロセスおよび回帰テストが効率的であることを示します。
この発生率を定期的にチェックし、発生傾向と改善策の相関を追うことが重要です。
テストの効率化を図るならアウトソーシングがおすすめ
テストの効率化を進めるうえで、「テストプロセスそのものを外部に委託する」という選択肢があります。これはコスト削減だけでなく、品質向上やプロセス改善といった効果をもたらす可能性があるアプローチです。
アウトソーシングは、プロフェッショナルな第三者が標準化された手法と豊富な知見を持ち込み、客観的な視点でプロセスを見直すことができる点が大きな魅力です。
特に、CI/CDや自動化といった専門的な領域では、大きな効果が期待できます。
3-1 テストアウトソースのメリット
テストをアウトソーシングするメリットは以下の通りです。
- 専門的な知識・スキルを活用できる
外部のテストエンジニアは、さまざまな現場で経験を積んでおり、最適なテスト技法やツール選定、設計ノウハウを保有しています。そのため、品質向上と工数削減の両立が可能です。 - テストプロセスの標準化・自動化が進む
属人的になりがちな内製のテスト業務に比べて、外部パートナーの手が入ることで、より洗練されたテストプロセスやフレームワークが導入される可能性があります。 - 開発チームが本来の業務に集中できる
テスト工数が外部に移ることで、開発チームは実装や要件定義など、コア業務に専念できます。 - コストが削減される
内製リソースの教育や確保に比べて、アウトソースの方が短期的なリソース調達やスケーラビリティの面で有利なケースも多く、結果的にコスト削減につながります。 - テストプロセスの改善が加速する
専門家が設計・実行・改善サイクルまで関わることで、テストプロセス全体の効率化やCI/CD環境の最適化が進みやすくなるという副次効果も得られます。
3-2 テストアウトソースのデメリット
メリットがある一方で、デメリットもあります。
アウトソーシングすることで発生しうるデメリットは以下の通りです。
- コミュニケーションコストが増加する
外部パートナーとのやりとりが増えるため、仕様の共有・確認や成果物のレビューといったコミュニケーション負荷が一定発生します。 - プロセス管理が難しい
テスト作業の進行状況や品質を内部で完全に可視化・コントロールすることが難しくなる可能性があります。体制設計と信頼関係の構築が重要です。
こうしたリスクも、初期段階でのルール設計や密なコミュニケーション体制の構築によって軽減できます。
アウトソーシングを導入する場合は、テスト分野における専門性やコミュニケーション・報告体制が整っている企業を選定するよう心掛けましょう。
企業選びについてはこちらの記事をご覧ください。
▶ ソフトウェアテストをアウトソーシングするメリットと注意点・企業選びのポイント
まとめ
本記事では、ソフトウェアテストの効率化について解説しました。
ソフトウェアの品質を維持しつつ、開発を高速化するためには、テストプロセスの効率化が欠かせません。また、テストプロセスの改善は一度行ったら終わりではなく、継続的な改善活動が求められます。
バルテスはテスト専門企業として、コンサルティングやテスト自動化、テストアウトソーシングなど、さまざまなサービスを提供しています。テストプロセスの改善に課題のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
また、テストを効率化させるためにテスト自動化の導入を検討している方は、こちらの資料もご覧ください。
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