近年、ソフトウェア開発においてソフトウェアテストのアウトソーシングが一般的になりつつあります。
その要因として、ソフトウェアの複雑さが増す中で、その品質を維持するのが難しくなっていることが挙げられます。
さらに、開発リソース不足や、チーム内に専門的スキルを持った人材を確保するのが難しいという背景もあります。
本記事では、ソフトウェアテストをアウトソーシングするメリットやあらかじめ知っておくべき注意点について解説していきます。
また、テストのアウトソーシングの効果を最大化するための5つのポイントもご紹介。ぜひ最後までご覧ください。
ソフトウェアテストをアウトソーシングする4つのメリット
ソフトウェア開発において、品質を左右する重要な工程がテストです。
しかし、社内リソースだけで対応しようとすると、工数やスキルの確保、スケジュール調整など、多くの課題が生じます。
こうした中で、多くの企業に取り入れられているのが、ソフトウェアテストのアウトソーシングです。
ソフトウェアテストをアウトソーシングすることで、限られた社内リソースを有効活用しながら、高品質なソフトウェアを効率的にリリースすることが可能になります。
この章では、アウトソーシングによって得られる主な4つのメリットをご紹介します。
- 社内リソースの最適活用
- テスト専門家による高品質なテストの実施
- 短納期対応の柔軟性
- コストの最適化
1-1 社内リソースの最適活用
ソフトウェアテストのアウトソーシングによって、開発チームメンバーのテストに関する業務負荷を軽減し、限られた社内リソースを開発や戦略的な業務に集中させることができます。
テストはソフトウェア品質を左右する重要な工程ですが、それを専門の外部パートナーに委ねることで、開発チームはプロダクトの付加価値を生み出すコア業務に注力できます。
結果としてビジネス全体の推進力を高められるため大きなメリットと言えるでしょう。
1-2 テスト専門家による高品質なテストの実施
アウトソーシングをすることで、専門家による高品質なテストの実施が期待できます。
アウトソーシング先として選定されるのは、テスト専門の企業やチームです。
豊富な経験と専門知識をもとに、より高品質なテストを実施してもらえます。業務要件に関わるものだけでなく、セキュリティやパフォーマンスなどの非機能要件に対しても、専門的な視点からのテストが行われ、ソフトウェアの品質向上へ貢献されるでしょう。
1-3 人員調整の柔軟性
アウトソーシングによって、テスト工程に必要なリソースが柔軟になります。
テスト工程に許された工数によって、人員などのリソースを調整できるのが魅力です。自社内でテストに必要な人材育成を行わずに、必要な時に必要なリソースを確保できるので、プロジェクトの期間変更にも対応しやすくなります。
1-4 育成コストの最適化
人材育成には一定のコストがかかります。テストという専門領域においても、人材を育て上げるには十分なプロジェクト経験と、実践が必要です。
アウトソーシングを利用することで、そうした人材育成にかかるコストを削減できます。フルタイムでの雇用と比較しても、アウトソーシングの方がコストパフォーマンスに優れるケースもあるため、限られたリソースの中で効率的に専門性を確保したい場合には有効な選択肢となります。
ソフトウェアテストをアウトソーシングする際の注意点
ソフトウェアテストのアウトソーシングは大きな効果が期待できますが、委託すれば必ず効果がでる、というわけではありません。
アウトソーシングする前に、注意すべきポイントを把握しておきましょう。
主な注意点としては以下のようなものがあります。
- コミュニケーションの齟齬が生じやすい
- ノウハウの社内蓄積が進みにくい
- 一定のセキュリティリスクがある
- 企業によっては品質のばらつきがある
- 成果物の検収コストが発生する
それぞれ詳しく解説していきます。
2-1 コミュニケーションの齟齬が生じやすい
アウトソーシングできるからといって、業務をすべて丸投げしてしまうのは危険です。委託先とのコミュニケーションが不足すると、要件の誤解や認識のズレが生じ、期待した成果物が得られないリスクがあります。特に、テストの目的や範囲、期待する品質などは、あらかじめ明確に伝えることが重要です。
一方で、必要以上に打ち合わせや確認作業が多くなりすぎると、かえって社内の負荷が増えてしまい、アウトソーシングの効果を得られなくなることもあります。
コミュニケーションが多すぎても少なすぎても問題が生じるため、定例ミーティングの頻度や窓口の明確化、情報共有のルールをあらかじめ取り決めておきましょう。円滑な連携と高品質なテストの実現につながります。
2-2 ノウハウの社内蓄積が進みにくい
委託先にテストを任せると、社内でのノウハウ蓄積が進みにくくなります。
特に、テスト設計や実行に関する知見が社内に残らないため、次回以降のプロジェクトで同じようなテストを行う際にも、再度外部に依頼する必要が出てきます。
委託先によっては、テストの実行とともにコンサルティングを行ってくれる場合もあります。社内でも徐々に体制を固めていきたい場合は、コンサルティングも提供している企業を選ぶと良いでしょう。
また、ドキュメント化を推進する委託先を選定し、テスト設計から実行までの間に作成されたドキュメント類を納品してもらうようにしましょう。
2-3 一定のセキュリティリスクがある
委託先が開発対象の関係で機密情報や個人情報を取り扱う場合もあります。それには、一定のセキュリティリスクが伴います。情報漏洩や不正アクセスのリスクを考慮し、適切な契約やセキュリティ対策を講じることが重要です。
場合によっては、国内外の法令や規制に準拠したセキュリティに関する監査が求められる場合があります。委託先企業のセキュリティポリシーを確認し、必要に応じてセキュリティ対策を講じているか確認しましょう。
2-4 企業によっては品質のばらつきがある
委託先の技術力や経験、得意分野によって、テスト結果の品質にばらつきが生じる可能性があります。たとえば、特定のプラットフォームや技術に強い業者であっても、逆に苦手な領域もあります。アウトソーシング先の選定時には、実績や得意分野を確認することが重要です。
これは自分たちの開発するシステムのドメインや動作するプラットフォーム、技術スタックによって異なります。アウトソーシング先であれば何でも良いわけではなく、自分たちのシステム領域に強い業者を選びましょう。
2-5 成果物の検収コストが発生する
アウトソーシングの委託先から納品される成果物に対して、検収コストが発生します。たとえば納品されたテスト結果や、レポートの品質を確認するための時間やリソースを指します。特に、成果物の品質が低い場合、再度修正とテストを依頼する必要があり、追加のコストが発生するかもしれません。
もちろん、テストを自分たちで行うのに比べれば圧倒的に低い工数になるでしょう。しかし、検収結果によっては再度テスト実施につながる恐れもあります。よって事前の成果物に関する確認はむずかしいことも多いので、最終的な検収の前に途中段階での成果物を確認できるように委託先の企業と調整しておくと良いでしょう。
アウトソーシングの効果を最大化するための5つのポイント
アウトソーシングの効果を最大限に引き出すためには、単に業務を外部に任せるだけでは不十分です。期待通りの成果を得るためには、事前の準備や進行中の管理、アウトソーシング先の企業選定の観点まで、いくつかの重要なポイントをおさえておく必要があります。ここでは、アウトソーシングを成功に導くために、事前に検討すべき要素や、実務上で注意すべき点についてご紹介します。
- 要件を明確にする
- テスト計画や設計仕様書を準備する
- スコープの明確化と優先順位付けをする
- インターフェースやツール連携の調整をする
- 自社にあったテスト専門会社を選定する
3-1 要件を明確にする
委託先に対して、曖昧な指示を行うのはミスの原因になります。
テストのプロといっても該当システムに関する知識は圧倒的に不足しています。そのため、どの部分をアウトソースするかをあらかじめ明確にしましょう。
こういった要件は、あらかじめ社内で共有されていなければなりません。そうしないと、担当者や部署毎に期待値が異なり、現場に混乱が起きてしまうでしょう。
3-2 テスト計画や設計仕様書を準備する
委託先によっては、発注元がテスト計画書を作成する場合もあります。
コンサルティングを含む場合には、委託先と協議しながら作成するケースもあります。
設計仕様書などのドキュメントは可能な限り準備しましょう。準備が難しい場合は、口頭での説明やQ&Aを受け付ける体制を整える必要があります。システムに関する知識を共有しなければ、適切なテスト実施は困難になります。
3-3 スコープの明確化と優先順位付けをする
委託先に対して、テストの範囲を明確に伝えることが重要です。テストの範囲が不明確な場合、委託先は適切なテストを行うことができません。
テスト範囲が曖昧になると、テストの不足または過剰なテストとなり、コストの最適化が難しい状態になる恐れがあります。
特にテスト対象範囲外の部分を明確にして、委託先に伝えるようにしましょう。これによって、テスト範囲の認識のずれを防ぐことができます。
また、発注元がテスト計画書を作成する場合には、テストの優先順位を明確にすることも重要です。どういったポイントでテストを行うか、どのモジュールを優先的にテストするかなど、社内であらかじめ決めておきましょう。
3-4 インターフェースやツール連携の調整をする
テストする箇所によって、使用するツールは異なります。
例えば以下のようなツールです。
- テスト自動化ツール
- 単体テストツール
- パフォーマンステストツール
- セキュリティテストツール
- テスト管理ツール
- CI/CD連携ツール
上記のように、テストツールはさまざまに存在し、出力されるレポートも異なります。テストツールのスクリプトが再利用しやすいものや、レポートが他のツールと共用できるなど汎用的なものを選択しましょう。
また、自社で利用しているプロジェクト管理ツールと連携しているものを選ぶなど、後々のワークフローとつなげられるものを選べると良いでしょう。委託先によっては使用できるのが特定のツールに限定されている場合があります。そのため、特定のツールに限定されていると、選定の幅が狭まり、要件に合ったパートナーを見つけにくくなる可能性があるため注意が必要です。
3-5 自社にあったテスト専門会社を選定する
ソフトウェアテストを外部に委託する際、どの専門会社を選ぶかは非常に重要です。
適切なパートナーを選ぶことで、テスト品質の向上や効率化が期待できます。逆に選定を誤ると、トラブルやコスト増につながることも。
自社製品やプロジェクトに適したテスト専門会社を選定する際は以下のポイントをチェックしましょう。
| □ 自社の開発領域(Web/デスクトップ/業務系/ゲーム等)とマッチしているか □ 類似システムや業務領域での実績があるか □ 実績や事例が公開されているか、または確認できるか □ 連絡方法(メール/チャット/定例MTGなど)が明確か □ チャットツール(Slack/Teamsなど)での対応が可能か □ 進捗報告や課題報告の頻度・タイミングが適切か □ テスト設計スキル(ブラックボックス、ホワイトボックスなど)があるか □ 自動テストの導入・運用実績があるか □ 自社の使用ツールやワークフローとの連携が可能か □ セキュリティ/パフォーマンス/ユーザビリティのテスト対応が可能か □ 本番相当のテスト環境を構築できるスキル・設備があるか □ UI/UXなど自動化が難しいテストのリソースも確保できるか □ テスト計画書、テストケース、結果レポートなどが整備されているか □ 自社フォーマットに対応可能か、もしくはフォーマットを事前に確認できるか □ ドキュメントの品質やわかりやすさが担保されているか □ トラブル発生時のエスカレーションルートが明確か □ 緊急時に迅速な対応が可能な体制か □ 過去にトラブル対応した経験や事例があるか |
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まとめ
今回はソフトウェアテストのアウトソーシングについて、そのメリットや注意点を解説しました。
アウトソーシングは、適切に活用すれば大きな効果を得られますが、注意点も多く存在します。
ソフトウェアテストのアウトソーシングを成功させるために、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 要件を明確にする
- テスト計画や設計仕様書を準備する
- スコープの明確化と優先順位付けをする
- インターフェースやツール連携の調整をする
- 自社にあったテスト専門会社を選定する
今回の記事をアウトソーシング先の選定やプロジェクトの進行にお役立てください。
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