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最終更新日時:2025.12.22 (公開日:2025.12.22)

システムテストとは?結合テストとの違いと主な種類・進め方

ソフトウェア開発において、テストは重要な役割を担います。

開発のフェーズそれぞれにおいて、異なるテストを実行し、システムの品質を高めていきます。

今回取り上げるシステムテストは、テストプロセスの中で重要な位置を占めていますが、その役割や進め方については混乱が生じるケースがあるようです。

そこで、本記事では、システムテストの概要と結合テストとの違い、進め方について詳しく解説します。

特に、システムテストはリリース品質を左右する「最後の砦」としての役割を果たすため、その重要性を理解して、適切に実施しましょう。

システムテストとは?

システムテストとは、ソフトウェア開発におけるテストプロセスの一部であり、システム全体が要件を満たしているかを確認するためのテストです。システムテストは、開発されたソフトウェアがユーザーの要求やビジネス要件に適合しているかを検証します。

V字モデルで表すと、以下のような位置づけです。

V字モデル

システムテストの次の工程がユーザーによる「ユーザー受け入れテスト(UAT)」になるため、システムが期待通りに動作するのはもちろんのこと、パフォーマンスやUI/UX、セキュリティなど、さまざまな観点からシステム全体を確認します。

また、システムテストの前工程においては、開発チームが担当するケースが多いでしょう。そして、システムテストではQAチームや第三者検証チームが主導することが一般的です。システムテストはユーザー視点でのテストを行うため、より広範な観点からシステムを評価します。

システムテストと結合テストの違い

ソフトウェア開発において、システムテストの前に実施されるのが「結合テスト」です。

本章では、システムテストと結合テストの違いを4つの観点で解説します。

観点 結合テスト(Integration Test) システムテスト(System Test)
目的 モジュール間のインターフェースやデータ連携の確認。個別には問題がないモジュール同士の組み合わせによる不具合の検出。 システム全体がユーザー要求・要件通りに機能・性能を満たすかを検証。業務シナリオに基づいたテストを実施。
スコープ 特定のモジュールやコンポーネント間の連携部分。 例:APIとDB、フロントエンドとバックエンドの接続など。 システム全体(アプリケーション、DB、ネットワークなど含む)エンドツーエンドでの検証。
実施タイミング 単体テストの後、システムテストの前。システム全体は未完成でも、部分的な連携確認を行う。 システム全体が完成した後に実施。本番環境に近い構成で行い、総合的な動作確認を行う。
担当部署・チーム 開発チームが主導。モジュールの内部構造や連携仕様を理解しているため、効率的に実施可能。 QAチームや第三者検証チームが主導。ユーザー視点に立ったブラックボックステストを行う。

2-1 目的の違い

結合テストは、モジュール間のインターフェースやデータのやり取りを確認するテストです。

個々のモジュールは仕様通りであっても、結合した際に問題が発生することがあります。結合テストでは、そうしたモジュール連携が正しく行われているかを確認します。

一方、システムテストは、システム全体の機能や性能を確認することを確認するテストです。具体的には、業務シナリオに基づいたテストを実施し、システムがユーザー要求や要件定義通りに動作するかどうかを検証します。

2-2 スコープの違い

結合テストは、特定のモジュールやコンポーネント間のインターフェースに焦点を当てます。たとえばAPIとデータベース層の連携であったり、フロントエンドとバックエンドの連携などがスコープになります。

これに対して、システムテストはシステム全体が対象になります。つまり、アプリケーションのみならず、データベースやネットワークなど、システム構成要素全体、エンドツーエンドがテスト範囲になります。

2-3 実施タイミングの違い

結合テストは単体テストが終わり、システムテストを実施する前に行われます。システム全体は未完成の状態で、複数のモジュールや機能を組み合わせて、部分的に実行されます。

これに対して、システムテストは、システム全体が完成した後に実施されます。本番環境に近い構成で、ユーザーシナリオに基づいたテストを行います。

2-4 担当部署・チームの違い

結合テストは、開発チームが主導して実施することが一般的です。開発者がモジュール間のインターフェースやデータの流れを理解しており、実際のデータ確認も容易なため、結合テストを効果的に実施できます。

一方、システムテストはQAチームや第三者検証チームが主導します。テストは主にブラックボックステストであり、システム全体をユーザー視点で評価します。

システムテストの主な種類

上記で述べた観点を満たすため、システムテストでは様々なテストを行います。

システムテストのフェーズで行う主なテストの種類をご紹介します。

3-1 機能系テスト

機能系テストは、主にシステムの機能や業務フローに基づいて、システムが正しく動作するかを確認するテストです。

【例】

  • 機能テスト
    要件定義や仕様書に基づいて、各機能が正しく動作するか検証します。
  • 回帰テスト
    システムへの追加開発や修正によって、既存機能に影響が出ていないか確認します。
  • 例外処理テスト
    異常系の入力や操作に対して、システムが適切にエラー処理を行うか確認します。

3-2 非機能系テスト

非機能系テストは、システムの性能やセキュリティ、運用性など、機能以外の要件を確認するテストです。

【例】

  • 性能テスト 
    システムの処理速度やレスポンス時間など、システムのパフォーマンスが要求を満たしているか確認します。
  • 負荷テスト 
    システムに高負荷をかけて、性能や安定性を確認します。特に、同時接続数やトランザクション数を意識します。
  • ストレステスト
    システムに極端な負荷をかけて、システムの限界を確認します。システムの応答性や、耐障害性を確認します。
  • セキュリティテスト 
    システムのセキュリティ要件を確認します。データの暗号や機密データの取り扱い、脆弱性診断などを実施します。
  • 運用テスト 
    システムの運用に関する要件を確認します。バックアップやリカバリ、障害時の対応手順などを検証します。
  • ユーザビリティテスト 
    システムのUI/UXを確認します。ユーザーがシステムを使いやすいか、操作性や視認性を確認します。

この他、アクセシビリティテストや互換性テストなども必要に応じて実施されます。

システムテストの進め方

システムテストの進め方についてテストエンジニアの視点で解説します。

システムテストは主に以下のような流れで進めていきます。

  1. 計画
    目的・範囲・リスクの整理、テスト戦略策定
  2. 設計
    シナリオ作成、テストデータ準備、環境要求定義
  3. 実装・環境構築 
    ツール選定。自動化フレームワーク・CI/CD連携など
  4. 実行・管理 
    進捗トラッキング、障害報告フロー、暫定対処
  5. 評価・フィードバック
    カバレッジ分析、品質可視化、改善サイクル

それぞれ詳しく解説します。

4-1 計画

システムテストの計画を立案します。

テスト計画書の中では、テストの目的や範囲、リスクの評価と整理を行います。

システムの規模が大きい場合、リスク評価と整理によって優先順位をつけることが重要になります。

4-2 設計

テスト計画に基づいて、テストを設計します。

テストシナリオを作成し、テストを行うのに必要なテストデータを用意します。システムテストでは、より本番環境に近い環境が必要になるため、あらかじめテストを行う環境についても定義しておきます。

4-3 実装・環境構築

システムテストを実施するための環境を構築します。

テストツールの選定や、自動化フレームワーク、CI/CDとの連携なども考慮します。

システムテストはUI/UXなど手動での実施項目も多いですが、可能な限り自動化を進めて、効率的なテストが実現しましょう。

4-4 実行・管理

システムテストを実行します。進捗のトラッキングや障害報告フロー、暫定対処などを行います。

システムテストは開発チームだけではなく、QAチームや第三者検証チームが関与するため、コミュニケーションや進捗管理が重要になります。

4-5 評価・フィードバック

システムテストが完了したら、テスト結果を評価します。

カバレッジ分析や品質可視化を行い、次回のテストに活かします。テスト結果は開発チームへフィードバックし、改善サイクルを回します。

こうしたテスト計画と実施については、自動化とShift – Left(シフトレフト。工程の前倒し)を意識して進めましょう。

自動化は回帰テストを容易にし、フィードバックサイクルを高速化します。シフトレフトは、開発の初期段階からテストを意識することで、プロダクトの品質を高められます。

まとめ

システムテストは、ソフトウェアがユーザーの要求やビジネス要件を満たしているかを検証する最終工程の重要なテストです。結合テストとの違いを理解し、目的やスコープ、実施タイミング、担当チームに応じた適切な役割分担が求められます。

また、システムテストでは機能面だけでなく、性能、セキュリティ、運用性、ユーザビリティなど、多角的な観点からの検証が不可欠です。これらを網羅的に行うためには、計画から設計・実装・実行・評価まで、段階的かつ綿密なプロセスが必要です。

システムテストは単なる「最終確認」ではなく、プロダクト全体の品質とユーザー体験を左右する最重要プロセスとなります。

適切な設計と実行で、高品質なソフトウェアの提供を目指しましょう。

バルテスはテスト専門企業として、コンサルティングやテスト自動化、テストアウトソーシングなど、さまざまなサービスを提供しています。

システムテストや結合テストの実施においてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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