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最終更新日時:2026.10.14 (公開日:2025.03.04)

【最新】WMS(倉庫管理システム)改修で押さえるべき7つのテスト観点

物流業界で利用されるシステムの一つが、倉庫管理システム(Warehouse Management System、以下WMS)です。WMSは倉庫内の入出荷や在庫、ピッキングなどの業務を一元的に管理し、物流業務の効率化と精度向上を支えています。

いわゆる「2024年問題」でトラックドライバーの時間外労働に上限が設けられて以降、物流の効率化は物流事業者だけでなく、荷物を出す側・受け取る側である「荷主」企業の課題にもなりました。2026年4月には改正物流効率化法にもとづく一定規模以上の荷主への義務が始まり、国は荷主企業のシステム改修を後押しする予算も要求しています。

こうした流れの中で、WMSをはじめとする物流システムの改修に取り組む企業が増えていくと考えられます。一方で、物流システムは止まると出荷や売上に直接影響するため、改修時のテストが欠かせません。

本記事では、WMSの基本と物流をめぐる最新の動きを整理したうえで、WMSを改修する際に押さえておきたいテストのポイントを解説します。

WMS(倉庫管理システム)とは

WMSとは、倉庫内の「モノ」と「作業」を管理するシステムです。主な機能には次のようなものがあります。

機能内容
入荷管理入荷予定と実際に届いた商品の照合、検品、棚への格納
在庫管理どの商品が、どの棚に、いくつあるかの把握。ロット・賞味期限の管理
ピッキング管理出荷指示にもとづいて、作業者に取り出す商品と場所を指示
出荷管理梱包、送り状(配送ラベル)の発行、出荷実績の登録
棚卸管理帳簿上の在庫と実際の在庫の照合

1-1. ほかのシステムとの違い

WMSは単独で動くシステムではありません。受注を受け付ける基幹システムやECサイト、配送を管理する輸配送管理システム(TMS)、自動倉庫や搬送ロボットなどの物流設備(マテハン機器)、さらに現場で使うハンディ端末やラベルプリンタとつながって動いています。

役割が近く混同されやすいシステムとの違いは、次のとおりです。

システム主な役割WMSとの違い
基幹システム(ERP)販売・購買・会計・生産など会社全体の業務を管理在庫は「帳簿上の数量」として扱うことが多い。WMSは倉庫内の棚・ロット単位で「実際の在庫」と作業を管理する
在庫管理システム在庫の数量や入出庫の記録を管理在庫の数量把握が中心。WMSはピッキングや検品など倉庫内の作業指示まで担う
OMS(受注管理システム)ECサイトなど複数の販売チャネルの受注を一元管理「何を出荷するか」を決めるのがOMS、「どう出荷するか」を倉庫内で実行するのがWMS
TMS(輸配送管理システム)配車、配送ルート、運行状況の管理倉庫の外(輸送)を管理するのがTMS、倉庫の中を管理するのがWMS
WCS/WES(倉庫制御・実行システム)自動倉庫やソーター、搬送ロボットなどの設備を制御WMSの指示を受けて、設備を実際に動かす

このように、WMSは受注・在庫・輸送・設備をつなぐ「中継点」の役割を持っています。そのためWMSの改修は、WMSだけでなくつながっている周辺システムや機器にも影響が及ぶ可能性がある点を、まず押さえておく必要があります。

1-2. 提供形態によって変わる改修時の注意点

WMSの提供形態は、大きく次の3つに分けられます。どの形態を使っているかによって、改修やテストで気をつけるべき点も変わります。

提供形態特徴改修・テストで気をつけたい点
クラウド型ベンダーが提供するサービスをインターネット経由で利用。初期費用を抑えやすいベンダー側の定期的なバージョンアップで、自社の連携部分や帳票に影響が出ないかを確認する必要がある
パッケージ型(オンプレミス)製品を自社のサーバーに導入し、必要に応じてカスタマイズ自社向けのカスタマイズ部分と、製品の標準機能との境目で不具合が起きやすい
スクラッチ開発自社の業務に合わせてゼロから開発業務に合わせやすい反面、仕様を知る担当者が限られ、影響範囲の見極めが難しくなりやすい

いずれの形態でも、「自社が変えた部分」と「変えていないが影響を受ける部分」を切り分けて確認することが、テストの出発点になります。

2027年、物流をめぐる最新の動き

2-1. 2024年問題のその後

2024年4月、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が設けられました。何も対策をしなければ、2030年度には輸送力が約34%不足するおそれがあるという政府の試算もあり、限られた輸送力を効率よく使う取り組みが求められています。

2-2. 改正物流効率化法で荷主にも義務が発生

こうした背景から、物流効率化法(物資の流通の効率化に関する法律)が改正され、荷主企業にも物流効率化への取り組みが求められるようになりました。

2026年4月からは、取り扱う貨物の重量が年9万トン以上の荷主などが「特定荷主」に指定され、次のような義務を負っています。

  • 物流効率化に向けた中長期計画の作成・提出
  • 取り組み状況の定期報告
  • 物流全体を統括する物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任

荷待ち時間の短縮や、積載効率の向上に向けた発注方法の見直しなどを進めるには、受発注や在庫、出荷の仕組みそのものを見直す必要が出てくることがあります。

2-3. 2027年度、荷主のシステム改修を国が支援する見込み

国土交通省は2027年度予算の概算要求で、物流関連に約209億円を計上しました。その中に、新規事業として「発着荷主の商慣習変革」(約61.9億円)が含まれています。

これは、荷主企業が物流事業者と連携して、物流の負担が少ない発注を行う取り組みに対し、必要なシステム改修の経費などを支援するものです。現時点では概算要求の段階ですが、予算が成立すれば、2027年度にかけて荷主企業のシステム改修が増えることが予想されます。

WMS改修の進め方とテストの位置づけ

発注の仕組みや出荷の方法を変える改修は、WMSの一部の機能だけでなく、入荷から出荷までの業務の流れ全体に影響することがあります。まずは、改修の一般的な進め方と、各工程で行うテストを整理します。

工程主な内容関連するテスト観点(4章の番号)
① 現状把握・要件定義改修の目的、変更する業務、影響するシステムや機器を洗い出す影響範囲の整理(全観点の前提)
② 設計・開発改修内容の設計、プログラムの修正―
③ 結合テスト・総合テスト周辺システムとつないだ状態で、業務の流れに沿って確認4-1連携/4-3回帰/4-4負荷/4-6例外業務
④ データ移行・受入テスト本番に近いデータで、利用部門・現場が業務として使えるかを確認4-2データ移行/4-5現場機器/4-6例外業務
⑤ 移行リハーサル・本番切り替え切り替え手順の予行演習、稼働直後の監視4-7本番切り替え

テストを開発の最後にまとめて行うと、問題が見つかったときに手戻りが大きくなります。要件定義の段階から「何をどこまで確認するか」を決めておくことが、スケジュールどおりに稼働させるための近道です。

WMS改修で押さえるべき7つのテスト観点

ここでは、WMS改修時に確認しておきたいテストの観点を7つ紹介します。

4-1. 周辺システムとの連携テスト

WMSは基幹システム、ECサイト、TMS、マテハン機器などと、受注データや在庫データ、出荷実績をやり取りしています。個々のシステムのテストでは問題がなくても、システム同士の「つなぎ目」で、データの形式や項目の意味、送受信のタイミングが食い違うと、在庫数のずれや出荷漏れにつながるおそれがあります。

改修した機能だけでなく、データを受け渡す相手側のシステムも含めて、業務の流れに沿って確認することが大切です。

4-2. データ移行テスト

WMSの刷新や大規模な改修では、既存の商品マスタや在庫データ、ロケーション(保管場所)情報を新しい仕組みに移し替えることがあります。移行したデータに漏れや変換ミスがあると、「システム上は在庫があるのに棚にない」といった状態が起きかねません。

件数の一致だけでなく、ロット・賞味期限・保管場所などの項目まで、移行前後で正しく引き継がれているかを確認します。

4-3. 回帰テスト

回帰テストとは、改修によって、変更していない既存の機能に思わぬ影響が出ていないかを確かめるテストです。WMSは入荷・在庫・出荷の各機能がデータでつながっているため、ある機能の変更が別の機能に影響することがあります。

改修のたびに繰り返し実施する必要があるため、影響する範囲を見極めてテストの対象を絞り込むことがポイントになります。繰り返し行うテストは、自動化して負担を減らす方法もあります(参考:テスト自動化の記事タイトル(※T-DASH既存記事のURLを設定))。

4-4. 繁忙期を想定した負荷テスト

セールや年末など、出荷が集中する時期には、ふだんの何倍もの処理がWMSに集まります。通常時には問題なく動いていても、処理が集中すると画面の応答が遅くなったり、出荷指示の作成が間に合わなくなったりすることがあります。

過去の繁忙期の出荷件数などをもとに、ピーク時の負荷をかけたテストを行っておくと安心です。

4-5. 現場の端末・機器での確認

WMSは、ハンディ端末でのバーコード読み取りや、ラベルプリンタでの送り状発行など、現場の機器と一体で使われます。開発環境の画面上では正しく動いていても、実際の端末や機器では表示が崩れる、印字位置がずれるといった問題が起きることがあります。

実際に現場で使う機器を使って、作業の流れに沿って確認することが重要です。

4-6. 例外業務のテスト

倉庫の業務は、予定どおりに進むものばかりではありません。受注後のキャンセルや数量変更、ピッキング時の欠品、返品の受け入れ、賞味期限切れ品の引き当て防止、誤出荷の取り消しなど、「いつもと違う流れ」が日常的に発生します。

こうした例外の処理は、通常の流れに比べてテストで見落とされやすい部分です。現場の担当者に、実際にどのような例外が起きているかを聞き取り、テストのシナリオに組み込んでおくと、稼働後のトラブルを減らしやすくなります。

4-7. 本番切り替えのリハーサル

物流は基本的に止められないため、本番の切り替えは休日や夜間など限られた時間で行うことが多くなります。データ移行やシステムの切り替えが時間内に終わらなかったり、途中で問題が起きたりすると、翌営業日の出荷に影響しかねません。

切り替えの手順を本番と同じ条件で予行演習し、かかる時間を実測しておくことが大切です。あわせて、問題が起きたときに元の仕組みへ戻す手順(切り戻し)と、その判断基準も事前に決めておきます。稼働直後は、出荷件数や在庫数に異常がないかを重点的に監視する体制を整えておくと安心です。

事例紹介
バルテスは、ファッションブランドを展開する株式会社アダストリア様のシステム品質を、2018年から支援しています。 支援は、2名体制でのECサイトのテストから始まりました。その後、業務システムへと範囲を広げ、2022年には在庫管理システム・会計システムの大規模改修のテストを担当しています。現在は基幹システムを含むテスト全般を支援しており、新たに倉庫自動化プロジェクトにも携わっています。 アダストリア様との対談では、流通・小売業のシステム品質の難しさとして「複数のシステム間でのデータの受け渡しが複雑」である点が挙がりました。
WMSの改修でも同じように、システム同士のつなぎ目をどう確認するかが品質を左右します。 対談の内容は、以下のレポートで詳しく紹介しています。  
>【VALTES QUALITY Dayセッションレポート】アパレル企業のDXにおける品質戦略

よくある質問

Q. WMSとERP(基幹システム)の違いは何ですか?

ERPは販売・購買・会計など会社全体の業務を管理するシステムで、在庫は帳簿上の数量として扱うことが多いです。WMSは倉庫の中に特化し、棚やロット単位の実際の在庫と、入荷・ピッキング・出荷などの作業を管理します。

Q. WMSとTMSの違いは何ですか?

WMSは倉庫の中の在庫と作業を、TMS(輸配送管理システム)は倉庫から出た後の配車や配送ルートを管理します。出荷データを受け渡す関係にあるため、どちらかを改修する際は両者の連携を確認する必要があります。

Q. クラウド型のWMSでもテストは必要ですか?

必要です。クラウド型はベンダーがシステム本体の品質を管理しますが、自社の基幹システムとの連携部分や帳票、現場の機器との組み合わせは、利用する企業ごとに異なります。ベンダーのバージョンアップのタイミングでも、自社の業務に影響がないかを確認することが望まれます。

Q. WMS改修のテストは、どのくらいの期間を見込めばよいですか?

改修の規模や連携するシステムの数によって大きく変わるため、一概には言えません。周辺システムとの連携や現場の機器での確認、本番切り替えのリハーサルまで含めると、開発そのものと同じくらい計画的に時間を確保しておくことが重要です。

まとめ

改正物流効率化法の施行や国の支援策をきっかけに、荷主企業では受発注・在庫・出荷の仕組みを見直す動きが広がっていくと考えられます。その中心となるWMSは、基幹システムやTMS、現場の機器とつながって動いているため、改修した機能だけを確認しても十分とはいえません。

周辺システムとの連携、データ移行、既存機能への影響、繁忙期の負荷、現場の機器、例外業務、そして本番切り替え。要件定義の段階から業務の流れ全体を見渡してテストを計画することで、改修後も物流を止めずに運用しやすくなります。

WMSの改修で大切なのは、改修した機能が「動く」ことを確かめるだけでなく、倉庫の業務全体が「止まらずに回る」ことを確かめることです。

アダストリア様との対談レポートは、資料としてもダウンロードいただけます。物流システムを含む複数システムの品質をどう確保しているかを知りたい方は、ぜひご覧ください。

この記事の監修者

江添 智之

江添 智之

バルテス株式会社 R&C部 副部長

WEB系、エンタープライズ系、医療系など様々な開発業務にプログラマ、システムエンジニア、プロジェクトリーダーとして携わった後、バルテスにてテストエンジニア・コンサルタント業務に従事。現職では主にテスト業務に関する研究開発および人材育成を担当。Scrum Alliance認定スクラムマスター、ディープラーニング検定(G資格)、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、JSTQB Advanced Level(テストマネージャ、テストアナリスト)など、ソフトウェアの開発およびテストに関する資格を多数取得。JaSST Kansai 実行委員。現在の関心は機械学習のテスト分野への応用と効率的なテスト自動化。

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