SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由でソフトウェアを提供する仕組みであり、多くの企業の業務を支える重要なサービスとなっています。
しかし、クラウドやネットワーク、外部サービスなど複数のシステムに依存するため、障害が発生すると多数のユーザーに影響が及ぶ可能性があります。
実際に、クラウドインフラの障害やアプリケーションの不具合などにより、大規模なサービス停止が発生した事例も少なくありません。
本記事では、過去にあったSaaSの障害事例をもとに、SaaSで障害が起きる原因や障害発生時の対応策、障害を防ぐための対策について詳しく解説します。
SaaS 障害事例4選
SaaSは多くの企業の業務を支える重要なサービスですが、インフラやネットワーク、アプリケーションなど複数の要素に依存しているため、障害が発生する可能性があります。
ここでは、過去に発生した代表的なSaaS・クラウドサービスの障害事例を紹介します。
事例① AWSのクラウド障害(2025年)
クラウドサービス大手のAWSでも、過去に大規模な障害が発生しています。
例えば2025年には、AWSの管理システム(コントロールプレーン)で問題が発生し、
- Zoom
- Microsoft Teams
- Slack
- Atlassian製品
など、AWS上で動作する多数のサービスに影響が及びました。
この事例は、クラウドインフラの障害が多数のSaaSサービスに波及する典型例といえます。
参考:https://lab.wallarm.com/aws-outage-lessons-learned
事例② Cloudflareのグローバル障害(2025年)
CDNやセキュリティサービスを提供するCloudflareでも、2025年に世界規模の障害が発生しました。この障害では、Cloudflareのネットワークに問題が発生し、
- ChatGPT
- X(旧Twitter)
- Spotify
など、多数のサービスが一時的に利用できなくなる事象が発生しました。
Cloudflareはインターネットの基盤的なサービスの一つであるため、一部のシステム障害が多くのWebサービスに波及する可能性があります。
参考:https://digitalsolley.com/2025/11/19/cloudflare-outage-2025/
https://www.washingtonpost.com/business/2025/11/18/cloudflare-outage-error-status
事例③ Slackの大規模障害(2025年)
ビジネスチャットツールとして世界中で利用されているSlackでは、2025年2月に大規模な障害が発生しました。
この障害では、
- メッセージ送受信の停止
- ワークスペースへの接続エラー
- API機能の不具合
などが発生し、多くのユーザーの業務に影響が出ました。
原因はバックエンドシステムやデータベース関連の問題とされており、最終的に数時間以上にわたってサービスが不安定な状態が続きました。
参考:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20250311-3147435
https://treblle.com/blog/slack-outage-api-failures
事例④ GitHubのデータベース障害(2024年)
ソフトウェア開発者向けプラットフォームGitHubでも、過去にデータベース関連の問題による障害が発生しています。
この障害では、
- リポジトリの閲覧不可
- Pull Requestの操作不可
- サービス応答の遅延
などが発生し、多くの開発チームに影響が及びました。
GitHubの事例は、データベースの可用性がSaaSサービス全体に大きく影響することを示すケースとして知られています。
SaaSで障害が起きる原因
SaaSサービスでは、インフラやアプリケーション、データベース、外部サービスなど複数の要素が組み合わさって動作しています。そのため、いずれかの要素に問題が発生すると、サービス全体の停止や機能不全につながる可能性があります。
ここでは、SaaSで障害が発生する主な原因について解説します。
2-1. インフラ障害
SaaSは多くの場合、クラウドインフラ上で提供されています。そのため、クラウドサービスやネットワークに問題が発生すると、アプリケーション自体に問題がなくてもサービスが利用できなくなることがあります。
例えば、クラウドリージョンの障害やネットワークのトラブル、DNSやCDNの障害などが発生すると、ユーザーがサービスにアクセスできなくなったり、応答が著しく遅くなったりすることがあります。
実際に、クラウドインフラの障害が原因となり、複数のSaaSサービスが同時に停止する事例も報告されています。このように、SaaSは基盤となるインフラの影響を受けやすいという特徴があります。
2-2. アプリケーションの不具合
アプリケーションの不具合も、SaaS障害の代表的な原因の一つです。
新機能の追加や仕様変更の際にバグが混入すると、特定の操作でエラーが発生したり、サービス全体の挙動が不安定になったりすることがあります。
また、想定していない入力データや利用パターンによって例外処理が正常に動作せず、システムエラーにつながるケースもあります。
特にSaaSでは、機能追加や改善を継続的に行う開発スタイルが一般的です。そのため、リリース頻度が高い環境では、十分な検証が行われないまま不具合が本番環境に持ち込まれるリスクも高まります。
2-3. データベースの問題
SaaSサービスでは、多くのユーザーデータや業務データをデータベースで管理しています。そのため、データベースに問題が発生すると、サービス全体に影響が及ぶ可能性があります。
例えば、アクセス数の増加によってデータベースの接続数が上限に達したり、負荷の高いクエリが集中したりすると、レスポンス遅延や処理停止が発生することがあります。また、データベースのロック競合やストレージ不足なども、サービス障害の原因となる場合があります。
SaaSでは利用ユーザー数の増加に伴ってデータ量やアクセス量も増えるため、データベース設計やパフォーマンス管理が重要になります。
2-4. 外部サービス依存
多くのSaaSサービスでは、決済サービスやメール配信サービス、認証サービスなど、外部のAPIやクラウドサービスを利用しています。そのため、外部サービスで障害が発生すると、自社サービスにも影響が及ぶ可能性があります。
例えば、決済APIが停止すると決済処理ができなくなり、メール配信サービスに問題が発生すると通知メールが送信されないといった問題が起こります。また、外部サービスの仕様変更やレート制限によって、システムの動作に影響が出るケースもあります。
このように、SaaSでは外部サービスとの連携が多いことから、依存関係の管理や障害発生時の対応設計も重要なポイントとなります。
SaaSで障害を防ぐための対策
SaaSサービスでは、安定したサービス提供を維持するために、障害を未然に防ぐ取り組みが重要です。
ここでは、SaaSサービスの安定運用において重要とされる主な対策について解説します。
3-1. 監視体制の強化
SaaSサービスの安定運用には、システムの状態を継続的に監視し、異常を早期に検知できる体制を整えることが重要です。
例えば、サーバーのCPU使用率やメモリ使用量、アプリケーションのエラー率、APIのレスポンス時間などを監視することで、システムに問題が発生する前兆を把握することができます。また、ログ分析やパフォーマンス監視を組み合わせることで、潜在的な問題を早期に発見できる場合もあります。
このような監視体制を整備することで、障害の早期発見と迅速な対応につながり、サービス停止などのリスクを低減することが可能になります。
3-2. テストの強化
ソフトウェアの品質を確保するためには、リリース前のテストを十分に実施することが重要です。
機能テストや回帰テストに加えて、実際の利用環境を想定した負荷テストや性能テストを行うことで、システム負荷が高まった際の問題や、想定外の挙動を事前に確認することができます。
また、自動テストを導入することで、継続的に機能追加や改修が行われるSaaS開発においても効率的に品質を確認することが可能になります。
こうしたテストの仕組みを整えることは、障害の発生リスクを低減するうえで重要な取り組みです。
3-3. 冗長化・高可用性設計
SaaSでは、システムの一部に問題が発生した場合でもサービスを継続できるよう、冗長化や高可用性を考慮した設計が求められます。
例えば、複数のデータセンターやクラウドリージョンを利用するマルチAZ構成やマルチリージョン構成を採用することで、一部のインフラに障害が発生してもサービスを継続できる可能性が高まります。
また、フェイルオーバー機能を備えることで、障害発生時に別のシステムへ自動的に切り替えることができ、サービス停止時間の短縮にもつながります。
このように、システム設計の段階から可用性を考慮することが、SaaSの安定運用において重要になります。
3-4. リリース管理の最適化
SaaS開発では、機能追加や改善を継続的に行うことが一般的です。そのため、リリース時のリスクを抑えるための運用方法も重要なポイントになります。
例えば、カナリアリリースや段階的リリースを採用することで、新機能を一部のユーザーに限定して公開し、問題がないことを確認してから全体へ展開することができます。
また、ブルーグリーンデプロイ(※)などの手法を利用することで、システムの切り替え時のリスクを抑えることも可能です。
こうしたリリース管理の仕組みを導入することで、本番環境への影響を最小限に抑えながら安全に機能を展開することができます。
※ブルーグリーンデプロイ…本番環境を2つ用意して、切り替えるだけでリリースする手法
SaaSで障害が起きたときの対応策
SaaSサービスでは、想定外のトラブルに備え、障害発生時に迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。
ここでは障害が起きたときの対応策についてご紹介します。
4-1. 障害の検知
障害対応の第一歩は、異常をできるだけ早く検知することです。
多くのSaaSサービスでは、システム監視ツールを利用してサーバーの状態やアプリケーションのエラー率、レスポンス時間などを常時監視しています。異常値が検知されると、運用担当者へアラートが通知され、迅速な対応が可能になります。
また、ユーザーからの問い合わせやサポート窓口への連絡によって障害が発覚するケースもあります。いずれの場合でも、問題を早期に把握できる体制を整えておくことが重要です。
4-2. 影響範囲の特定
障害を検知した後は、どの範囲に影響が及んでいるのかを迅速に把握する必要があります。
具体的には、どの機能が影響を受けているのか、どのユーザーやリージョンで問題が発生しているのかを確認します。影響範囲を正確に把握することで、対応の優先順位を判断しやすくなり、適切な復旧作業につなげることができます。
SaaSではユーザー数が多く、影響範囲が広がりやすいため、ログや監視データをもとに原因の特定を進めることが重要になります。
4-3. 応急対応
影響範囲を確認した後は、サービスへの影響を最小限に抑えるための応急対応を行います。
例えば、直前のリリースが原因と考えられる場合には、システムを以前のバージョンへロールバックすることで迅速な復旧を図ることがあります。また、アクセス集中などによる負荷が原因の場合には、サーバーリソースの増強やスケールアウトなどの対応が行われることもあります。
場合によっては、一部機能を一時的に停止することでサービス全体の安定性を維持するという判断が行われることもあります。
4-4. ユーザーへの情報共有
障害発生時には、ユーザーへの情報共有も重要な対応の一つです。
SaaSサービスは業務で利用されるケースも多く、障害の状況が分からないままではユーザーの業務に大きな影響を与える可能性があります。そのため、多くのSaaS事業者ではステータスページや公式SNS、サポート窓口などを通じて、障害の発生状況や対応状況を随時公開しています。
迅速かつ透明性のある情報共有を行うことで、ユーザーの不安を軽減し、サービスへの信頼維持につながります。
4-5. 原因分析と再発防止
障害が復旧した後は、同じ問題を繰り返さないための原因分析を行います。
このプロセスでは、障害の直接的な原因だけでなく、検知の遅れや対応手順の問題なども含めて振り返りを行い、再発防止策を整理します。例えば、監視項目の追加やテスト強化、リリースプロセスの見直しなどが行われることがあります。
こうした改善活動を継続的に行うことで、SaaSサービスの信頼性を高めていくことができます。
SaaSの品質向上・障害対策ならバルテスにご相談ください
SaaSサービスでは、機能追加や改善を継続的に行う開発スタイルが一般的です。
その一方で、リリース頻度の増加やサービスの拡大に伴い、テスト工数の増加や品質管理の難しさといった課題を抱える企業も少なくありません。
例えば、次のような悩みを抱えているケースも多く見られます。
- リリース頻度が上がるにつれてテスト工数が追いつかない
- QA担当者が少なく、特定メンバーへの依存が高い
- テスト観点や品質判断基準が属人化している
- 内製と外部委託のバランスをどのように取るべきかわからない
SaaSやプラットフォーム事業では、継続的な機能追加や短いリリースサイクルの中で品質を維持する必要があるため、テスト業務を単なる作業として扱うのではなく、品質管理の仕組みとして設計することが重要になります。
バルテスでは、ソフトウェアテストの専門企業として、これまで多くのSaaS・Webサービス開発プロジェクトにおいて品質支援を行ってきました。テスト設計やテスト実行の支援だけでなく、テスト体制の構築や品質管理プロセスの整備など、企業ごとの開発体制やサービス特性に合わせた支援を提供しています。
開発体制や組織構成が変化しても、品質を低下させない管理体制を構築していきたいご担当者の方はぜひバルテスにご相談ください。
また、SaaS・プラットフォーム事業者向けに、テスト体制の最適化に関する資料もご用意しています。
テスト業務の内製化と外部活用をどのように組み合わせるべきか、品質管理の仕組みをどのように構築すべきかといったポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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まとめ
SaaSは多くのユーザーにサービスを提供できる一方で、インフラやアプリケーション、外部サービスなどに依存しているため、障害が発生すると広範囲に影響が及ぶ可能性があります。
そのため、障害の原因を理解したうえで、テストや監視、設計面での対策を講じることに加え、障害発生時に迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。
安定したSaaSサービスを提供するために、品質管理を属人化させず、継続的に改善していく仕組みを構築していきましょう。
品質向上の仕組みについてお悩みがある方は、バルテスにお気軽にご相談ください。
