テスト設計を行うときに、何から手を付ければ良いか分からないといった不安の声を聞くことがあります。
確かに、近年のシステムは大規模化、複雑化しており、テストケースをどういった粒度で、どういった観点で作成すればいいか悩むチームは多いです。
そこで考えたいのが「テスト観点」です。テスト観点を明確にすることで、テストケースの網羅性を高め、品質リスクを可視化し、チーム全体での知識共有を促進できます。
本記事では、テスト観点の重要性とその具体的な作成方法について解説します。テスト設計における「観点」の意味を深く理解し、実践に役立てていただければ幸いです。
テスト観点とは何か
テスト観点とは、システムや機能に対してどのような視点、切り口でテストを行うかを示すものです。これは、テスト設計を実際に開始する前の指針となり、テストケースを作成する際の基礎となります。
1-1 テスト観点の主な要素
テスト観点の主な要素を3つご紹介します。
①機能要件や非機能要件に基づく観点
機能要件は、システムが提供すべき具体的な機能を指します。たとえば、ユーザー登録機能や商品検索機能などです。
一方、非機能要件は、システムの性能や信頼性、セキュリティなど、機能要件以外の品質に関する要件を指します。
テスト観点では、これらの要件に基づいて、どのようなテストを行うかを明確にします。たとえば、以下のような観点が考えられます。
- ユーザー登録機能の正しい動作確認
- 商品検索機能のレスポンス時間の測定
- システム全体のセキュリティテスト
- プライバシーデータの保護に関するテスト
②ユーザビリティやアクセシビリティの観点
ユーザビリティは、システムがどれだけ使いやすいかを評価する観点です。
そして、アクセシビリティは、障害を持つユーザーがシステムを利用できるかどうかを評価する観点になります。
これらの観点は、特にUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)に関連するテストに関わります。具体的には、以下のような観点が考えられます。
- UIの直感的な操作性
- スクリーンリーダーでの読み上げテスト
- 色覚障害者向けのカラーパレットの適切性
③セキュリティやパフォーマンスに関する観点
セキュリティは、システムが不正アクセスやデータ漏えいから保護されているかを評価する観点です。
また、パフォーマンスは、システムが要求された負荷に対して適切に応答できるかを評価する観点になります。
これらの観点は、特にシステム全体の信頼性や安定性に関わるテストにおいて重要です。具体的には、以下のような観点が考えられます。
- 不正アクセスに対する脆弱性テスト
- データ漏えいのリスク評価
- システムの負荷テスト
1-2 テストケースとの違い
テスト観点は、テストケースを作成するための基礎となる視点であり、テストケースそのものではありません。
システムや機能に対してどのような視点でテストを行うかを示すのがテスト観点であり、テストケースはその観点に基づいて具体的なテスト手順や期待結果を定義したものです。
つまり、テスト観点は「何をテストするか」を示し、テストケースは「どのようにテストするか」を示すものです。
チームメンバーがそれぞれにテストケースを作成してしまうと、粒度や観点がバラバラになり、網羅性や品質リスクの可視化が難しくなります。
そのため、テスト観点を明確に定義して共有することで、チーム全体で一貫したテスト設計が可能になります。
テストケースについて詳しくはこちらをご覧ください。
▶ 【項目別】テストケースの書き方とNG例・作成時の3つのポイント
なぜテスト観点が必要なのか?主な3つの理由
テスト観点はなぜ必要なのでしょうか。その理由を3つ解説していきます。
2-1 網羅性の確保
1つ目の理由は「網羅性を確保するため」です。
テスト観点が定義されていない、共有されていない場合を想定します。各メンバーが独自の視点でテストケースを作成すると、同じ機能に対して異なる観点からのテストが行われ、網羅性が低下します。
この状態では、重要な機能や要件が見落とされるリスクが高まります。
そこで、テスト観点を明確にし、チーム内で共有することによって、各メンバーが同じ視点・観点からテストを行えるようになり、結果的にテストケースの網羅性を高めることができます。
2-2 品質リスクの可視化
2つ目は「品質リスクを可視化するため」です。
テスト観点を明確にすることで、システムや機能に対する品質リスクが見えてきます。
たとえば、特定の機能に対してセキュリティやパフォーマンス観点でのテストが不足している場合、そのリスクを早期に発見できます。
そして、どこにリスクが集中しているかを把握できれば、優先順位をつけたテスト計画が立てやすくなるでしょう。
テストにかけられるリソースは限られているため、リスクの高い部分に重点を置いたテストを行うことは、システム全体の品質向上につながります。
2-3 属人化の防止とチーム内共有の促進
3つ目の理由が「属人化の防止とチーム内共有を促進するため」です。テスト観点を明確に定義してチーム全体で共有することで、特定のメンバーに依存しないテスト設計を可能にします。
もし属人化が進んでしまうと、特定のメンバーがいないとテストが進まない状況になり、チーム全体の生産性が低下してしまいます。
テスト観点とは、いわば「テストの設計図」のようなものです。これを共有することで、各メンバーが同じ基準でテストケースを作成できるようになり、チーム全体での知識共有が促進されます。
属人化の防止は、チーム全体のスキル向上にもつながります。
テスト観点リストの作り方
では、具体的にテスト観点リストをどのように作成すれば良いのでしょうか。以下のステップで進めると効果的です。
ステップ1. 目的とスコープの明確化
ステップ2. 基本的な観点のカテゴリを用意
ステップ3. カテゴリごとに具体的な観点を列挙
ステップ4. 仕様書やストーリーチケットを参照する
ステップ5. チームでレビュー
ステップ1 目的とスコープの明確化
テスト観点リストを作成する前に、まずはテストの目的とスコープを明確にします。何をテストするのか、どの範囲をカバーするのかを定義することで、観点リストの方向性が決まります。
例えば、特定の機能に対するテストなのか、システム全体の品質を評価するのかによって、必要な観点は大きく変わります。これはリソースや時間の制約にも影響しますので、事前にしっかりと定義・確認しておきましょう。
ステップ2 基本的な観点のカテゴリを用意
次に、テスト観点を大まかなカテゴリに分けます。これによって、観点リストが整理され、後の具体的な観点の列挙が容易になります。一般的なカテゴリとしては、以下のようなものがあります。
- 機能要件
- ユーザビリティ
- セキュリティ
- パフォーマンス
- エラー処理
これらを基本として、プロジェクトやシステムの特性に応じて追加・変更していきます。
ステップ3 カテゴリごとに具体的な観点を列挙
各カテゴリに対して、具体的なテスト観点を列挙します。たとえば、機能要件のカテゴリでは以下のような観点が考えられます。
- ユーザー登録機能の正しい動作を確認する
- 商品検索機能のレスポンス時間を測定する
- 注文処理のトランザクション管理ができていることを確認する
また、非機能要件のカテゴリでは以下のような観点が考えられるでしょう。
- システムのスケーラビリティができているかを確認する
- データベースのバックアップとリカバリができることを確認する
ステップ4 仕様書やストーリーチケットを参照する
観点を列挙する際には、関連する仕様書やストーリーチケットを参照することが重要です。
これらのドキュメントには、システムや機能に関する詳細な情報が含まれており、テスト観点を明確にするための重要なリソースとなります。
仕様書やストーリーチケットをもとにテスト観点を分析することで、必要なテスト観点を漏れなく洗い出せるようになります。
特に、要件が変更された場合や新しい機能が追加された際には、これらのドキュメントを参照して観点リストを更新しなければなりません。
ステップ5 チームでレビュー
観点リストを作成したら、チーム全体でレビューを行います。レビューは観点の漏れや重複を防ぎ、チーム全体での合意形成を図るのに必要です。
レビューでは以下のポイントに注意します。
- 観点の網羅性
重要な機能や要件に対するテスト観点が漏れていないか - 観点の重複
同じ観点が複数存在しないか - 観点の明確さ
観点が具体的で理解しやすいか、テスト可能か
レビューを通じて、観点リストの品質を高め、チームメンバーの共通理解を深められます。
テスト観点リストを整理するためのポイント
テスト観点リストを作成した後は、整理や可視化によって、より効果的なテスト設計が可能になります。以下のポイントに注意して整理を進めましょう。
4-1 類似観点をグルーピングする
テスト観点リストには、類似した観点が複数存在することが少なくありません。そういった場合には、グループ化します。グループ化によってリストが整理され、理解しやすくなります。
たとえば、以下のようなグループ化が考えられます。
- ユーザビリティ関連の観点
例)UIの直感的な操作性、スクリーンリーダーでの読み上げテスト - セキュリティ関連の観点
例)不正アクセスに対する脆弱性テスト、データ漏洩れのリスク評価 - パフォーマンス関連の観点
– 例)システムの負荷テスト、レスポンス時間の測定
このようにグループ化を進めると観点リストがよりコンパクトになり、チーム全体での理解が深まります。
4-2 リスクベースで観点を整理する
すべてのテスト観点が同じ重要度ではないため、リスクベースドテストでは、リスクの発生確率とリスクが発生した場合の影響度で優先順位を決めていきます。
たとえば、以下のような基準で優先順位をつけることが考えられます。
- ビジネスに与える影響の大きさ
- ユーザーへの影響度
- システムの安定性に対するリスク
多くの場合、テスト工程におけるリソースは限られます。そのため、リスクベースでの観点整理は、重要な部分へのリソース配分を可能にし、テストの効率化につながります。
4-3 表形式・マインドマップで可視化する
テスト観点リストを表形式やマインドマップなどで可視化すると、より理解が進みます。可視化の工夫によって、チーム全体での共有やレビューがスムーズになるでしょう。
- 表形式
観点名、カテゴリ、優先度、担当者などを列にまとめることで、一覧性が向上します。 - マインドマップ
観点を階層的に整理することで、関連性やグループ化が一目でわかります。 - ツールの活用
JIRAやConfluence、Trelloなどのツールを使って、観点リストを管理することも有効です。 - マトリックス
観点とカテゴリを軸にしたマトリックスを作成することで、抜け漏れの防止や濃淡の可視化が可能になります。
現場でよく使われるテスト観点リストの例
テスト観点リストはプロジェクトやシステムによって異なりますが、以下にテスト観点リストの例を示します。
こうした観点を参考に、自チームのプロジェクトに適した観点を追加・修正していきましょう。
●機能要件に関する観点例
・ユーザー登録機能の正しい動作を確認する
・商品検索機能のレスポンス時間を測定する
・注文処理のトランザクション管理を確認する
● 非機能要件に関する観点例
・システムのスケーラビリティを確認する
・データベースのバックアップとリカバリを確認する
・システムの可用性を確認する
●ユーザビリティに関する観点例
・UIの直感的な操作性を確認する
・スクリーンリーダーでの読み上げテストを確認する
・色覚障害者向けのカラーパレットの適切性を確認する
●セキュリティに関する観点例
・不正アクセスに対する脆弱性テストを確認する
・データ漏えいのリスク評価を確認する
・認証と認可の適切な実装を確認する
● パフォーマンスに関する観点例
・システムの負荷テストをする
・レスポンス時間の測定をする
・同時接続ユーザー数の評価を確認する
●エラー処理、その他の観点例
・エラー処理の適切な実装をを確認する
・ログの出力と監視ができているかを確認する
・バックアップとリカバリのテストをする
まとめ
今回は、テスト観点の重要性とその具体的な作成方法について解説しました。
テスト観点を明確にすることで、テストケースの網羅性を高めて品質リスクを可視化し、チーム全体での知識共有を促進できます。
バルテスはテスト専門企業として、テスト計画・テスト設計支援を提供しています。テストに習熟した専門のエンジニアが、本当に必要なテスト計画・設計を立案するサービスです。
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