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最終更新日時:2024.10.08 (公開日:2023.04.07)

UAT(ユーザー受け入れテスト)成功のポイント ユーザー部門のあなたへ

大規模なシステム更改や、既存システムへの機能追加時など、システム開発を行った際にUAT(ユーザー受け入れテスト)の実施は必要不可欠なものです。しかし、「UATを実施することになったが、何をどうすれば良いのだろうか?」そんな悩み・疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。「そもそもUATって何をするの?」「テストは本業ではないし良く分からない」「どうすればUATを成功できるのだろうか」という疑問にお答えし、UAT成功のポイントについてユーザー部門の皆さまに向けて解説します。

UAT(ユーザー受け入れテスト)とは?

UATについて理解するにあたり、まず受け入れテストから説明します。日本におけるソフトウェアテスト技術者資格認定の運営組織であるJSTQBでは、受け入れテストは以下のとおり定義されています。「システムが、ユーザーのニーズ、要件、ビジネスプロセスを満足するかをチェックするための公式なテスト」ちょっと難しい表現で、特にユーザー部門の皆さまにとっては、分かりにくいですね。分かりやすく言い換えますと、「要望したものが、そのとおりに出来上がっているかを確認するテスト」と言うことができます。

システム開発を、住宅の建築に意味を置き換えて説明してみます。皆さまが様々な要望を出して新しく家を建てることを目的として利用した場合、晴れて我が家が出来上がった後、実際の建物を現場で確認することなく入居するでしょうか?外観は要望した通りに出来上がっているか、間取りは要望通りになっているか、窓は注文したものが付いているか、などおそらく確認や検証をされるのではないかと思います。システム開発もこれと同様で、自分たちが要望したものがその通りに出来上がっているかを確認することが必要です。

これが受け入れテストで、システム開発の中でも最後に行われることが多い工程です。さて、UATですが、「受け入れテスト」の前に「ユーザー」と付いているところがポイントです。受け入れテストには、誰が受け入れの確認をするのかによって、大きく3つの観点があります。

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【ユーザー受け入れテストの観点】

  • システムの観点
    システムの品質に問題がないか、システム要件に沿って確認する
  • 運用の観点
    システム運用部門が、出来上がったシステムを自分たちで運用できるか確認する
  • ユーザーの観点
    要望を出したユーザーが、要望通りのシステムが出来上がっているか確認する

この中で、最後のユーザーの観点で実施する受け入れテストが、UAT(ユーザー受け入れテスト)です。システム開発においては、そのきっかけとなる誰かの要望事項があります。皆さまのユーザー部門においても、こんなケースはないでしょうか?

  • 新サービスを提供するために新たなシステムを作りたい
  • 収益改善のために、この機能を追加したい
  • お客さまからの苦情が多いので、この画面の使い勝手を改善したい

このように、自分たちが実現したい要望を出して、システム開発を依頼していると思います。その結果出来上がったシステムは、自分たちの目線で確認して、その仕上がりで良いか確認をしなければなりませんよね。UATは、ユーザーの立場で、自分たちの日ごろの業務の流れやお客様の立場に立った操作に沿って、システムの仕上がりを確認します。「テスト」というと、スキルを持ったエンジニアがバグを見つけ出すものという印象が強いかもしれませんが、UATは「ユーザー部門が主役である」というところがポイントです。

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ユーザー部門は、テストに慣れていないという現実

「ユーザー部門が主役である」と書きましたが、実際に推進・実施される皆さまにとっては、UATに関わる機会はそう頻繁にあるものではないと思います。

【UATに関わらない理由】

  • 社内のユーザー部門の大半が関わるような大規模なシステム更改は、7~8年に一度というようなサイクルでしかやってこない
  • 毎年行われるような追加開発では、自部署に関係する案件がほとんどない、または担当として係わっていない

などの理由で、UAT自体に馴染みがないというユーザー部門の方も多いのではないでしょうか。そのため、UATを進めていくにあたって、「そもそもテスト自体に慣れていない」という環境が現実として立ちはだかります。実際にUATを進めていくためには、どんな作業が必要なのでしょうか。主に、以下のような5つの作業が挙げられます。

【UATを進めていくための作業】

  • テスト計画の作成
    テストを実施する期間、スケジュールを決定する
    テストの開始・終了基準を設定する
    問題発生時等の起票ルールや、連絡ルートを整理する
  • テストシナリオの作成
    UATで確認する事項を整理する
    確認する順番について、業務フローをもとにして整理する
  • テストケースの作成
    テストシナリオをもとに、個々の画面で実行する手順を整理する
    各手順を実施した結果、どのような結果を期待するのか(期待結果)を整理する
  • テストの実施
    操作した結果が期待通りであったか、期待と異なるかを確認する。
    期待と異なる結果が出た場合は、操作手順や発生した状況をまとめて、開発担当者へ連携する。
    日々の実施件数を集計して、進捗を管理する。
  • テスト結果報告書の作成
    実施した実績(実施件数、OK件数、NG件数など)を定量的に記載する
    発生した不具合事象について、定性的な評価を記載する
    総合的に判断して、要望通りに出来上がっているか、UATをOKとして良いか判断する

このような一連の作業を、日ごろテストに慣れていないユーザー部門の皆さまが主体的に進め、かつ成功に導くことは可能なのでしょうか?

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UATを成功に導くための大事なポイント

「餅は餅屋」という言葉があります。物事はその道の専門家に任せるのが一番良いというたとえですが、UATにおいても同様のことが言えます。すなわち、ユーザー部門の皆さまは、日ごろの自分たちの業務に沿ってシステム動作の確認に専念することが、UAT成功のための大事なポイントです。テストに慣れていないユーザー部門の皆さまが、UATで必要となる一連の作業すべてを行おうとするよりも、任せるところは専門家に任せるという考え方です。

具体的には、ユーザー部門とシステム部門の協力が必要不可欠です。例えば、テスト計画の立案や各種書式の準備、システムの詳細な動作確認は、システム部門側で主体となって行うよう役割分担を整理します。また、複数のユーザー部署が関わるような大規模なシステム開発の場合はよくあります。その場合はUATの進捗や結果報告を部署横断で取りまとめた上で、システム部門へ連携する作業が多く発生します。

システム部門からユーザー部門に、テスト管理スキルを持った要員を提供し、ユーザー部門側にUATの推進を担う組織を一時的に組成することも、一つの案です。もう一点、「日ごろの自分たちの業務に沿ってシステムの動作を確認する」ためには、どのようにすれば良いでしょうか。これも、テストに慣れていないユーザー部門の皆さまにとっては、あまり馴染みがないと思います。ここでポイントとなるのは、要望を出したユーザー部門の目的として、「何ができていればOKか」という考え方です。具体的には、出来上がったシステムにおいて

Must=できなければいけないこと

Never=あってはならないことの観点で確認する内容を抽出します。

銀行ATMに挿入された通帳に対して、明細を印字する場合を例に挙げてみましょう。

Must:これまでに印字されている次の行から明細を印字する、ページの最終行まで印字したら改ページする

Never:印字済みの行に二重に印字してしまう、ページの最終行まで印字しても改ページしない

というような観点を挙げることができます。このように、MustとNeverを併せて考えることで、UATで確認する内容を抜け漏れなく洗い出せます。

まとめ

「UAT(ユーザー受け入れテスト)成功のポイント ユーザー部門のあなたへ」と題して、説明してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。

UATを成功に導くためには、ユーザー部門の皆さまが主役となり、自分たちの得意分野に注力して作業を行える状況を作ることが重要です。

ユーザー部門とシステム部門の協力体制を構築し、得意分野ではMustとNeverの考え方で抜け漏れなく確認を行い、UATを成功に導きましょう。

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